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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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24 :げらっち
2024/05/04(土) 14:24:36
その声に、私は階段の下を見た。
それが視界に入った瞬間、ゾッとした。
黒いイロ。
それも、ぶっ濃い黒。塗りたくられた邪悪。
こんなイロは初めて見た。黒は細胞を蝕む癌であり助からないトリアージであり、本能的に感じる恐怖。
全身の毛が、白いうぶ毛が逆立った。まるで怯える子供のように、自分より華奢な楓の後ろに隠れた。
「七海ちゃん?」
楓は突然の闖入者に、不審な目を向けていた。例えイロを感じ取る能力が無くとも、階下に居るあの者の姿は不気味に映っただろう。
黒の戦士。
身長は2メートル近い大柄で、黒のマスクに黒いスーツ、全身が真っ黒に染まっている。そして大柄な体を覆う、漆黒のマント。
全身が、真っ黒い。
そんな中に浮かび上がるような一点の赤。マスクには透明のゴーグルの代わりに赤くて大きな単眼が付いていて、私たちを真っ直ぐに見上げていた。
その者は、低い、くぐもった声で喋った。
「学園の警備は固い。簡単に倒されるような下等な怪人共が入り込める隙などあるわけがない。これは毎年行われているイベントのようなものだ」
怖い。
その言葉の内容は、私の頭にインプットされなかった。黒い戦士は階段を上がり、私たちに近付いてきた。ただただ怯える私の前に、楓は立ち塞がってくれている。ごめん楓。私、動けない。動けないが、何とか声を振り絞る。
「先生!!」
いつみ先生は私のヘルプに応じ、タンッと、私たちの前に降り立った。
「生徒たちに近付くな、ブラックアローン」
男性にしては小柄ないつみ先生に対し、巨体を誇るブラックアローンと呼ばれた人物。
「何故近付けさせない。やましいことがあるのか。貴様が生徒を扇動しているのは知っている、Gレッド」
「僕は教師だ。教師らしく、生徒たちに希望について教えている。きみも教師なら教師としての矜持を持ったらどうだい?」
教師?
ブラックアローンが?
「抜かせ。貴様の企図したつまらん演出のせいで生徒が浮かれる。戦隊はカッコイイ、華やかなものだと思想を植え付けるプロパガンダ。そのように戦闘を軽んじいざ戦場に出れば、死ぬ。我輩は何度もそのような馬鹿を見てきた」
そして次に、ブラックアローンは、いつみ先生ではない誰かに話し掛けた。
「ナナシ」
それが私に向けられた言葉だと気付くのに、少し時間がかかった。
「ナナシ?」
それは私の事だった。
「ナナシ、貴様にはまだ戦士としての名が無い」
確かに私は、まだ虹になるどころか、戦隊にも、名前を持つ戦士にも成れていない。
「まずは名前を持て。我輩はブラックアローン。1人きりの戦隊だ」
ブラックアローンは私たちの傍を通り過ぎ、黒いマントをはためかせ、1人階段を登って去った。
つづく
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