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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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245 :げらっち
2024/06/15(土) 17:10:06

 チャイムは授業開始の合図だ。
 しかし先生はなかなか現れなかった。茹る様な猛暑の中、私たちは立たされている。佇立する私たちの影が後ろに伸びている。

 数人が「中止なんじゃね?」「校舎戻ろうぜ!」「喉乾いたぴよ!」などと言って列を抜けて行った。
「七海ちゃん、あたしたちも戻ろうよ! きっと代わりの先生が決まらなかったんだよ!」
 でも私は難色を示した。戦隊学園のことだ、こういう試練を与えてくることは目に見えている。
「なにこれぇ~! 嫌なんですけどぉ~!! 誰か太陽から華を守ってぇ~!!」
 ガタイの良い男子が何人か、長井の前に立って日影を作り、長井を休ませていた。

 更に数分が経過。
 私は熱中症準2級になっていた。戦隊スーツは汗でじっとり濡れ、全身が冷水を欲している。目はチカチカし、頭は痛い。立っているのがやっとだ。
「そうだ……」
 魔法の錬金術。手から冷気を出し、デコルテに当てた。キン、として意識が明瞭となった。氷属性で良かった。レッドだったらこんな真似はできない。
「七海ちゃん頭良いね!」
 楓も私を真似し、手から水を生み出し、顔にぶっかけた。

 熱中症1級の検定に合格したか、数人の生徒が崩れるように倒れた。長井に誘惑された男子も次々と倒れ、日影を失った長井は苦しみ出した。
「うぅ……暑ぃ暑ぃ~……なんかお花畑が見えるぅ……あか……しろ……きいろ……ぉ」

 長井華が倒れるのが見えた。

 9割の生徒が退避するか倒れた。
 すると日が陰ってきた。一時の水入り。私はフゥ、息を吐いた。
 そこにようやく教師が現れた。


「本日の戦隊体術基礎は、臨時で我輩が指揮を執る」


 影にまみれ、突如現れた大男。蜃気楼が具現化したかのようだ。真っ黒い戦士ブラックアローン。それはまるでブラックホール。何度見ても感じるのは恐怖一色。
 乾いた喉で、ゴク、固い生唾を飲んだ。私だけではない。生き残っていた生徒全員が身構えた。もしかしたら、この教師の存在を知らなかった生徒も居るかもしれない。ブラックアローンは戦隊学園の教師とされるが、授業をしている姿を見たことが無い。

「残ったのはこれだけか」

 ブラックアローンは2メートル近い長身で、私たちを見渡した。

「すぐに持ち場を離れた者は論外だ。この程度の試練に耐えきれず倒れた者は軟弱だ。どちらも実戦に出れば命は無いだろう。他の教師共の授業では甘過ぎる。ぬる過ぎる。貴様らのような腑抜けは戦場では生き延びれぬと、我輩が教えてやろう」

 それは授業の始まりだった。
 曇天から黒い箱が落ちてきた。ドスン! 重い音を立て着地。巨大な積み木のように、5つの箱が重なった。箱の四面に、砲門のような物が付いている。

「我輩の授業は単純明快だ。終業のチャイムが鳴るまでの間、生き延びろ」

 砲門が光った。
 それと同時に足元が炸裂した。視界がスローモー。背中から地面に落ちる。変身していなかったら、重傷を負っていただろう。間髪入れず、次の一発。鼓膜が裏返りそうな轟音。土の破片が私の体にぶつかりまくる。私は地面を蹴り、楓の手を引っ張ってただひたすら逃げた。
 百は砲撃があったろう。命からがら、グラウンド脇の森に着いた。茂みの中に伏せて、グラウンドの方を見る。
 雲はどいて、日の光りが戻っていた。砲撃は止んでいた。邪悪な積み木は黒光りしながら、ゆっくりと横回転している。あちこちから煙が上がり、多くの生徒が倒れていた。救助班が、熱中症で倒れた生徒と負傷した生徒を担架で運ぼうとしていた。ブラックアローンの姿はない。

「や、やばくね? ブラックアローンあたしらを殺す気か?」
「落ち着いて楓。確かに、戦隊学園では訓練中の戦死者も出ているという噂だしね」
「全然落ち着けないよ!!」
 草葉の下で私たちは視線を交わす。
「ここにずっと隠れてようよ?」
「いや、ブラックアローンが居ないのが不可解だ。少し様子を見てくる」
 私は身を屈め、茂みから日の下に出た。その瞬間。
 ドッカーン!!!
 意識が破裂した。

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