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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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246 :げらっち
2024/06/15(土) 17:10:56

 意識が再構成されると、私は逆様に倒れていた。つまり頭頂部で地面に落っこち、手足が垂れ下がっていた。頭がグワングワン。煤けた茂みの上で、いや、上下逆なので、茂みの下で、目を丸くしている楓と目が合った。

 あの砲台は動く物を察知し、こんな長距離まで、的確な砲撃ができるのか?

「楓はそこに居て!!」

 私は立ち上がり、砲台がある方とは逆向きに、森の中を走った。白樺の横を駆け抜ける。
 だが砲撃はどこまでも追ってきた。逃げども逃げども距離が離れない。私の背後を、ぴったりと爆発が付いてくる。まるで意思を持ってストーキングしているかのように。
 やがて古びた倉庫のような物を見つけ、その裏に回り込んだ。ここなら砲台から死角になる。
 それでも爆発は付いてきた。
 炎がハイジャンプ、私は3メートルくらい吹っ飛んで、手足をばたつかせ、鼻から草むらにダイブした。おかしい……

「その程度か、コボレホワイト。今の貴様の実力では、外の世界では2日と生き残れぬだろう。校外学習に行くのはやめておけ」

 ブラックアローンの声。

 地に突っ伏し、血の味を飲み込みながら、私は言い返す。
「そんなの、やってみなけりゃわからなくない?」

「無謀な挑戦は死者を増やすだけだ。外の世界には悪の組織がひしめいている。改造実験法人オス、次元教団アカカブ、ヘンダー一族、武装力士軍ドスコ。どこも冷徹な、プロの戦闘集団だ。学園は甘い。負けてもまだ次がある。だが実戦は違う。負けたら死ぬ。死んだら次は無い。死にたくなければ今ここで白旗を上げろ」

 私は土を思い切り握り締めた。
「絶対やだ」
 地面を殴った反動で起き上がり、振り向いた。
「そこだ!」
 私は鋭利な氷の槍を、自分から伸びる影に突き刺した。
「ツララランス!!」
「ぐあ!」
 黒い七海は悲鳴を上げた。くぐもった男の声で。影は形を変え立ち上がり、私よりのっぽになった。
 ブラックアローンになった。
 その胸部には氷柱が突き刺さっている。

「あの砲台は見せかけだ。あなたが私の影の中に入って、攻撃を続けていたんでしょう?」

「ほう……少しは腕を上げたか」
 ブラックアローンは自身に刺さった氷柱を引き抜き、捨てた。
「だがそれが分かった所で、貴様の負けだ」
 ブラックアローンの手から、真っ黒いサーベルが生えた。


 キーンコーンカーンコーン……


「残念でした。タイムアップ」
 だがブラックアローンはサーベルを振り上げた。
 私は手でヤレヤレというジェスチャーをした。
「終業のチャイムが鳴るまでの間、生き延びろ、って言ったよね? 最初に大遅刻して授業時間を短くし過ぎちゃったのが敗因じゃない? 私の勝ち」

 ブラックアローンは暫く固まっていたが、やがて渋々というふうにサーベルを下げた。

「コボレンジャーは強くなっている。コボレンジャーは負けない。あなたは少し悲観的過ぎるんじゃないかしら?」
 私はゴーグルの下から、ブラックアローンの赤い単眼を睨み上げてやった。
「貴様が楽観的であり、世間知らず過ぎるんだ。戦隊としては貴様の負けだ。これを見ろ」
 ブラックアローンは屈み、影に手を突っ込んだ。
 地から野菜を引き抜くように、何かを引っ張り上げた。何かと思えば少女だった。
「楓!!」
「七海ちゃん……」
 楓はブラックアローンに首根を掴まれ、申し訳無さそうに笑っていた。
「ごめん、さっき七海ちゃんと分かれた直後、降参しちゃったんだよね……」
「はぁ!? 何で?」
「いや、その理由が切実でさ……」
 楓は両の人差し指をツンツンと突き合わせ1人ETごっこをしていたが、やがて言った。
「おトイレしたくてさ……」
「……」
 盛大にテンションが下がった。
「……それで、結局間に合ったの?」
「いや、降参してすぐトイレに走ったんだけど、間に合わなくてちょいと漏らした」
 私はぎゃふんと言った。
「話にならん」
 ブラックアローンは楓の背中を強く突いた。楓はよろけ、正面から私にぶつかった。体力が限界だった私は踏ん張り切れず、楓もろとも倒れた。

「他の全員が死んで貴様だけが生き残ったとして、それを勝ちと思えるか? 負けよりもつらい負けになるだろう。真に弱い者は、死ぬことも許されないだろう」

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