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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗250

250 :げらっち
2024/06/22(土) 22:21:58

「ったく、あの馬鹿。もう二度と戻るか……」

 私はパジャマに裸足のまま寮の外に飛び出してきた。まだあの嫌な匂いが鼻に残っている。
 戦隊証もGフォンも置いてきてしまった。時間がわからないが、恐らく2時半くらいの深夜だろう。
 あのドジで学習能力の低い虫好き女の部屋から出られたことは、せいせいとした。でもこれから衣食住をどうしよう?
「そうだ、頼るべきは左大臣」
 女子寮には我がコボレの頼れるブレーン、佐奈が居る。彼女なら快く私を迎え入れてくれるだろう。佐奈の部屋から私の元部屋に上がれるし、楓の居ない間に私の生活道具を回収して、佐奈の部屋でセカンドライフを謳歌すればいい。
 そう思って女子寮に戻ろうとすると。

「……あれ?」

 道がよくわからなかった。
 きっと暗いせいもあるだろうが、女子寮がどっちの方向だったか、よく思い出せない。
「この坂を降りれば良いんだっけ?」
 私は裸足でアスファルトを踏み、左右を木々に囲まれた、舗装された坂道を降りて行った。この時間帯は車は通らない。時々小石が足裏にぶっ刺さって足ツボが気持ち良かった。

 坂を下り切ると、遠くに大きな建物が見えた。あれは女子寮ではない。学び舎だ。
「あれれ?」
 私は顎に手を添え考えた。確か、校舎のある区画と寮のある区画は離れていたはずだ。だがその位置関係が、どうにも思い出せない。眠いせいだろうか。いや、時間の感覚はあるのに、空間の感覚が、脳からすっぽり抜け落ちてしまったようなのだ。
「認知症が始まったか?」
 私は徘徊老人のように、夜闇の校庭を歩き回った。

 いつの間にやら正門付近に着いていた。
 10メートル程の巨大な扉を見上げる。その更に上には星が散りばめられている。そういえば以前、公一と星空を見上げたなぁ……
 ずっと上を見ていたらクラクラした。背の高さに目線を戻すと、正門脇に像が建っていることに気付いた。二宮金次郎の像か? と思ったが、変身した戦士のような像だった。姿勢良く台の上に突っ立っている。高さは台含め2.5メートルくらいだ。暗いため色はわからない。
 学習の何の役にも立たないこんな銅像を建てるとは、飛んだ道楽者も居たもんだ。

「寮はここじゃないな」

 私はまた学園内を彷徨うことにした。いつか寮に辿り着けるだろう。
 だが戦隊学園はそんなに狭くはなかった。

 案の定、森の中で、迷った。

「あれれれ?」

 白樺の横を通り過ぎた。
 この木は昼間にも見かけた。ブラックアローンの授業を受けた時だ。
「つまりここはレッドグラウンドの近くの森か?」
 公一とサイクリングをした末、穴に落ちて天堂茂と入れ替わった迷いやすい魔の森か。この森は学園の南東のはずだ。正門が真南で、校舎は中央。東部は農園、西部はプールや動物園など。学園のぼんやりとした地図を描けるのに、寮がどこに位置するのかだけがどうしても浮かばない。

 枝を踏みまくって足裏が痛い上、多種多様な虫に喰われ全身がかゆい上、昼間の授業の疲れもあって足が棒だ。
 そろそろ休める場所に着かないと、行き倒れる。本当に寮はどっちだっけか?

 体力の限界。デカい石に蹴躓いて、草の敷き詰められた地面に倒れた。

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