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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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251 :げらっち
2024/06/22(土) 23:13:50
「いたた……」
私は起き上がり、私を転ばしてくれたにっくき石を睨み付けた。
小さいアーチ状の石。自然物とは思えない。何だろう。
周りを見渡すと、同様の石が何個も転がっていた。不気味だ。
私は屈み込んで、さっき蹴躓いた石の表面をよく見た。何かが刻み込まれているようだ。星明かりでの読解は困難だ。私は手で石をなぞって、点字を読むように、そこに掘られている言葉を読み解こうとした。
「晴……天……?」
「触れるな」
私は驚きの余り垂直に2メートルほど飛び上がった。この身体能力を実戦で発揮したいものだ。
着地して声のした方を見ると、暗闇に真っ赤な目だけが浮かんでいてまたもや驚いた。甲高い悲鳴を上げてしまい、慌てて口を押さえた。
だがそれは目だけのお化けではなかった。全身が真っ黒で、目以外の部分が見えなかったのだ。
そこに居たのはブラックアローンだった。
「ここは墓場だ」
墓場。
その単語には気味の悪さがあった。墓、そう定義付けられると、石はただの物体ではなくなる。生死を隔て、時に橋渡す存在となる。
この石たちの下に、骸が埋められているのか。墓があるということは、死があったということだ。それも、ここに並ぶ石と同じだけの、多くの死が。
「外の世界は甘くない。学園で優秀な成績を収め、鳴り物入りでプロ戦隊としてデビューしたが、卒業し実戦に出て1日で死んだ、そういう輩も居た。チームワークを誇り活躍していたが、たった1人のミスで全滅した、そういう馬鹿な戦隊もあった」
楓1人のヘマでコボレ全体が危ぶまれるというワケか。
ブラックアローンは足音も立てずに、にじり寄ってきた。
「で、あなたはこんな深夜に墓参り?」
「買い被るな」
ブラックアローンは私の足下にあった墓石を蹴飛ばした。罰当たりだ。
石は闇の向こうに飛んで行った。
「我輩は教師として、貴様の身の程知らずを教えてやらねばならんのだ」
「またそんなこと言って。教師なら否定ばかりしてないで、実戦でも生きられるような道筋を教えてよ。いつみ先生みたいにさ?」
ブラックアローンは黙っている。
「それとも私が退学するまで嫌がらせをやめない気? 天堂茂とやってること同じだよ?」
「ほう、あの赤い戦士と同じか。そう思うか」
ブラックアローンは何を考えているか読めない。心のノートが、真っ黒いクレヨンで、真っ黒く塗り潰されているからだ。
「引き返すなら早い方がいい。奥まで進めば引き返すには時間がかかるし、二度と帰ってこれんかもしれんからな」
「でも残念、虹を見るにはもっと先まで進まなきゃいけないんだよ。私は前に進むからね」
ブラックアローンは私を見下し、「臭いな」と言った。
私のセリフ臭かったか? 少し恥ずかしい……
だがそれは実際の嗅覚の臭さだという事が分かった。私には楓スカンクの屁の匂いがまだ付いていたようだ。
「コボレブルーが貴様の帰巣本能を一時的に破壊したようだ。この臭気が取れる頃には、貴様は元居た場所に帰れるだろう」
帰巣本能を破壊? だから寮の場所が分からなくなったのか。
私を本当に出て行かせるつもりだったな? 楓め。
でも憎いと同時に誇らしくもあった。あの楓にそんな術が使えるとは。落ちこぼれなりに、あいつも進歩しているんだ。私は笑みを隠せなかった。
「あの子も案外侮れないでしょ? コボレも結構見所あるでしょ?」
「だからこそ警告しているのだ。闇に染まると」
ブラックアローンは黒いマントをひらめかせ、闇の中に帰って行った。
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