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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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253 :げらっち
2024/06/22(土) 23:15:05

「大変である!!!」

 誰かが食堂に乱入して、騒々しい食堂でも誰の耳にも届くような大音声で叫んだ。
 髪はツンツンと立ち上がり、真っ赤な学ランを着ている。全生徒の目がその生徒に釘付けになった。

「伝令戦隊デンレイジャーのデンレイレッドである!!! 1年校外学習の日程が決まったのである!!! 7月13日(水曜日)である!!! 該当戦隊は覚悟の準備をしておくように!!!」

 そう言うと伝令は走り去って行った。
 その情報に、食堂はさっき以上の喧騒に包まれた。


 楓が言った。
「何今のあいつ……寝癖すごくね?」

 私は軽く相槌を打った。
「ね」
「だよね!」
 楓は私を見て、いたずらっぽく笑った。
「でもそれ以上に、服のセンスがナンセンス」
「それなそれな」
 楓も私も、ププッと吹き出した。
「伝令戦隊デンレイジャーって名前もひどくね?」
「デンレイがクドイよね」
「コボレンジャーも考えてみるとすごい名前だけど!」
「こらそれを言わない」

 私はカレーを完食した。美味しかった。

「昨日は言い過ぎてごめんね」
「あたしの方こそごめん!」

 私と楓はそろって食器を片付けた。
「午後は授業無いけど、どーする?」
「取り敢えず部屋に帰ろうかな」

 帰巣本能を妨害する悪臭は、落ちていたみたいだ。私は女子寮の自室に戻ってきた。何だか、既に懐かしい。

「それで楓、深夜何をしていたの?」
「えー……それを訊いちゃうかあ。まあいいや、1日早いけど渡しちゃおう!」
 楓はダイニングのクローゼットから、何か巨大な物を引っ張り出した。

 それは発泡スチロールを削ったと思わしき、真っ白い像だった。
 何なのだこれは。

「じゃじゃーん!! 等身大七海ちゃん像! 誕生日おめでとーう!! 1日早いけど!」

 私はずっこけるどころか、崩れ落ちた。何が何だか、滅茶苦茶だ。
「ごめん付いて行けてない。これのどこが七海ちゃん像なの?」
 私は人型の発泡スチロールを見上げた。一応手足と頭があることにはあるが、顔は3歳児が雪だるまに描いたような有様で、目は点で、口はニッコリ笑っていた。唯一再限度が高いのは、大根足という所だけだった。しかもバランスが悪く、楓が手を離すと、像はコテンとひっくり返ってしまった。
「夜な夜なこれを作っていたの? というか、誕生日今日でも明日でもないんだけど……」
「ええっ? 明日じゃないの!?」
 私は自分の誕生日を楓含め誰にも言っていないはずだ。何故明日だと思った。
「公一くんが絶対明日だって言ったのに! 7月3日、語呂合わせで七海ちゃんの日だからって!!」

 私は反論する気も起きず、像と一緒に倒れる他なかった。
 私の誕生日はそんな安直な語呂合わせの日ではない。公一には今度おしおきが必要だな……

 勘違いとはいえ、翌日貰ったプレゼント、公一からの緑色のハンカチ、佐奈からのベーコンレタス本、豚からのフリーズドライ海鮮ちゃんこ、凶華からの変わった形の石ころは、大切な宝物になった。


つづく

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