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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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263 :げらっち
2024/06/22(土) 23:21:58
第24話 茶番劇
とある朝、私は楓・公一・凶華と学園の敷地を歩いていた。教科書の入ったショルダーバッグはちと重いが、朝の光りは柔らかく、早起きのセミの声なんかを聞きながら、のどかな気分。
「私は次、戦隊の乗り物Ⅰだ」
「奇遇やな、俺も一緒や!」
「あたし別の授業! じゃ、お2人さん、仲良くやんなよ!」
楓は私と公一の背中をタッピング。喉に異物が詰まった時の背部叩打砲だ。朝食のグリーンカレーが口から顔を出しそうになった。
いつも通りのくだらない、けれど友達の有難さをしみじみと感じる会話をしながら歩いていると、凶華が無邪気な顔して、命題をぶつけてきた。
「正義って何?」
命題は顔面にぶつかった。ドッジボールなら「顔面セーフ」で無効になる。
私が赤ピーマンの美味しい調理法を考えている間に、公一が先に答えた。
「正義は正義、悪の反対や。朝から小難しい質問すんな脳が飛び散りそうや」
公一は頭を掻きむしったので脳の代わりにフケが飛び散った。彼は夜も授業に出ていてほとんど寝てないのだ。
「シッシッ野良犬!」
公一は凶華を蹴ったが、犬は難なくかわし、メンコをぶつけて反撃した。
「イチ、お前には訊いてないぞ! オイラのご主人様に訊いたんだ。それにお前の理屈はなってない。それなら悪は何なんだよ」
「そら、悪は悪やで……」
公一は考えるのを放棄したようで、黙ってしまった。
「公一、凶華をいじめないでよ。私の飼い犬なんだから」
凶華は、私ならその答えを知っているとでも言うかのように、私の目をまじまじと見つめてきた。
私は天を仰いで考えた。白い雲がカンニングペーパーのように、答えを写し出してやいないか。
戦隊学園は、正義の学校だ。だが正義とは何だろう。
「戦隊は怪人や悪を倒し、此の世に平和をもたらすのが使命なんだろ? でも悪と正義の概念がわからなければ、何と戦えばいいかわからないよな?」
凶華の言う通りだ。
カラフルを志望動機にした私には、知らないことが多過ぎる。
「哲学的だね。それを考えるために入学した、ってことで鞘を納めてくれる? 目下の所」
凶華は、「まあいいよ」。
楓は私たちが難しい話をしている時用の耳栓を外した。
目の前に広い車道があり、横断歩道が引かれ、信号機が設置されていた。学園にはこんな設備もあるのだ。
渡ろうとするも赤信号に切り替わってしまった。生徒たちの乗ったバスやら資材を搬入するトラックやら黒塗りのリムジンやらスポーツカーやらゴミ収集車やら蹄戦隊キバレンジャーの馬やら曲芸戦隊ゾウレンジャーの象やら実験戦隊ケンキュウジャーの怪人力車やらミコレンジャーのミコみこしやら逆走老人やら色んな物が通り抜けた。
なかなか青にならない。
信号は赤のままだが、車が捌けた。今なら渡れそうだ。
「よーし、渡ろう! 今日も元気に信号無視!」
楓は手を上げて飛び出そうとしたが、私が止めた。
「何で止めるの? 七海ちゃん行列では抜かしたりする癖にこういう時だけいい子ぶるの?」
「あれは抜かしてるんじゃなくて、私が近付くと並んでる人が逃げるんだよ。たかが信号無視、されど信号無視。割れ窓理論って知ってる?」
「知」
「らないよね。ちっちゃいことでも、1つのルールを破ると、ずるずる他のルールも破るようになる。細かい事こそ気を付けないと全部だめになるよ」
楓は、両目と口を閉じ、立ったまま宇宙に行ってしまった。
車は居ないのに、信号はなかなか青にならない。ぶっ壊れたのだろうか。
「どう思う、凶華」と公一。
「知らねえよ。外の世界には信号なんて過保護な物は無い。危険を察知できない奴は死ぬ、自己責任だ」
「せやなぁ。このままじゃ授業に遅刻する。どんな手を使っても間に合わせるのが忍者や。渡るで!」
公一は横断歩道に踏み出した。
その時。
「コボレグリーン、信号を守りなさーい!!!」
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