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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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265 :げらっち
2024/06/28(金) 00:06:48
「いたたた……あいつら滅茶苦茶や……」
私の肩に掴まって歩く公一は、額から血を流していた。
私は1時間目に出るのを諦めて、公一を校庭の隅の手洗い場に連れて行った。
緑色のハンカチを水で濡らし、蛇口をぎゅっと閉め、座っている公一の患部を冷やしてあげた。
「イタタ! やさしくしてや」
「してんじゃん」
「そんな遠回しなことせんでも、お前の氷魔法で冷やしてくれたらよかったのに……」
「だめ。氷っちゃうから」
「じゃあ保健室に連れてってくれたら……」
「あそこのドクター、ヤブイだし」
それに。
「あなたと2人きりで話したいことがあって……」
公一と目が合った。
2人きりになるのは、何気に久しぶりな気がする。
目を逸らし、再び蛇口をひねって水を出し、血の付着したタオルを洗う。
「は、話したいことって何なん?」
「今夜、レストラン行ってみない?」
学園には食堂や購買の他にレストランもあるのだが、戦隊として実績を積んだ生徒しか入れない。つまりモチベ上げのためにそういった施設があるとも言える。
コボレンジャーは戦ー1で残り20戦隊に入ったことで、VIP専用施設の出入りが許可されるゴールドカードが支給されたのだ。
「で、でもあそこは食堂と違ってえらい金かかるんやろ?」
私は公一を見つめて、指を組み合わせて、おねだりの色仕掛け。
「おごって♡」
私は声を甘くして語尾に♡を付けるつもりで話したので、公一は頬を赤らめた。男は頼まれるのに弱い。特に好きな女からは……
「な、何やねんお前乞食のやり口が堂に入っとるやん!! 完全に紐やな。それ目的で優しくしてくれてたん? 油断ならない女やな。将来水商売でもやる気か。キャバレンジャーの2代目キャバピンクとかどうや」
キャバレンジャーというのは、ゴリンジャーやニッポンジャーと共に「ある意味」伝説と崇められている戦隊だ。
そのキャバピンクといえば夜の街で千もの男を相手に戦い抜いた「ある意味」伝説の戦士とされる。赤の日以後は活動が見られず消息不明だと言うが、今でも庶民の間では侮蔑の対象というか、不貞の象徴というか、差別用語として使われている。
「で、おごってくれるの」
私は急激に冷たい口調になった。
「どっちなのか早く決めてよ」
「怖! 二重人格なんとちゃうんか。お、おごったるよ。こういう時は男が払うもんやろ? うちまあまあお金持ちやし」
公一はちょっとだけ浮かれた顔になった。
「しかし楽しみやな高級レストランで七海と食事か……」
「ハイ決定ね。今度の校外学習の打ち合わせも兼ねて懇談会」
「な、なに!!」
公一の顔が青ざめた。
「まさかコボレン全員で行くん!?」
「当然」
公一は大口を開け顎が外れて落っこちた。どうやらデートの誘いと勘違いしていたようだ。まあ、勘違いさせるように言ったんだが。
これでコボレ全員分の支払いを確約させることができた。
校外学習は来週に迫っている。
コボレンジャー初めての、外の世界への進出。井の中の蛙が大海を知ればどうなるか。不安半分、危機感半分だ。楽しみなど無い。
私は遠足という物に良い印象が無い。
小中学校では友達なんて1人も居なかったし、シティ13は治安が悪く心がすさんだ子供が多く、いじめが横行していた。ボッチ飯を食べていたら、配給された弁当をいじめっ子のガキ大尉にこぼされたのを覚えている。
その記憶を公一に話して聞かせると、彼もまた不幸マウントを取ってきた。
「俺もいじめられとったからなあ。遠足では殴られ蹴られいじめ集団全員のアイスをおごらされたわ。お前も同じことしとる」
「あ」
すると、うるさい声。
「コボレホワイト、水道を出しっぱなしにするんじゃなーい!!!」
公一へのおねだりに夢中で蛇口を開けっぱなしにしていた。
ジャスティス車が校庭を爆走してきた。私は公一を引っ張って急いでその場を離れた。車は突っ込んできて手洗い場を破壊した。噴水のように水が空まで立ち上がる。
「逃げるんじゃなーい、悪者め、こらしめてやるー!!」
サンジャスティスが車を降りて追いかけてくる。
「またまた滅茶苦茶や!!」
私と公一は二人三脚でとにかく逃げた。サンジャスティスは足が遅かったので、撒くことができた。
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