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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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266 :げらっち
2024/06/28(金) 00:07:11
夜。
コボレの面々は、きっちりと制服を着て、校内のレストラン「タベルンジャー」に来ていた。
星空の下のテラス席。丸いテーブルを5人で囲う。周りのテーブルに居るのは上級生の戦隊ばかりで、コボレは浮いているようだったが、気にする必要は無い。コボレだって強いのだ。
「公一くん、ゴチになります!!」
楓が手刀を切った。
公一は自棄になったようで、本を読んで黙っていた。その表紙には『古今東西ブラックユーモア』と書かれていた。
「何読んどるのー?」
「七海にとんちで勝てるよう教養を付けとんのや」
「高級レストラン! 黒毛和牛が食べたいブヒ~」
豚の制服姿は、誰もが初めて見たに違いない。ブレザーははち切れそうで、Yシャツは第二ボタンまで開いており、ピンクのネクタイがゆるめに締めてある。
「凶華くんが居ないのが残念ブヒね」
「今夜はバイトって言ってましたね。逞しいですねあの子は……」
佐奈は黄色のネクタイだ。
凶華は無一文なので、学園でバイトをしてお金を稼いでいるらしい。どんな仕事をしているのだろう。
「お待たせしましたー、オードブルです」
ウエイターが5つのお皿を器用に運んできた。紫色のベストに、クロアゲハのような黒い蝶ネクタイがおしゃれだ。
「ありがとう凶華」
って。
「凶華!?」
ウエイターに扮しているのは紛れも無い星十字凶華だった。
「あ、ナナにカエにイチに豚にサナじゃねえか。こんなとこで何してんの?」
「何でうちが豚より後なんだ!!」と佐奈が荒ぶりコップをドンと置いたが、それはともかく、
「何って料理を食べに来たんだよ。あなたも誘ったはずだけど。ていうかバイト先ここだったんだ」
「ここは時給も良いし食事にありつけるからなあ」
「まかないでもあるの?」
凶華は踊るようにテーブルの周りを1周し、私たち5人の前にお皿を置いた。
私は自分の料理を見たが、明らかに量が少なかった。
「つまみ喰いしてるな!?」
凶華はチンチンのポーズになった。
「ごめんなさいご主人様!! オイラお腹が減って……お客がナナだとは思わなかったんだよー!」
「誰がお客でもつまみ喰いはしないこと。クビになるし、それ以上にまたサンジャスティスに目を付けられたらマズイ」
「あの偽善者たち……」と公一。
「結局、正義って何なんだ?」
凶華のその問いに対する答えは、隣のテーブルから飛んできた。
「正義というのは僕のようなエリートの事を言うのさ」
隣のテーブルには天堂茂とエリートファイブのメンバー、およびポンパドーデスが、正装して座っていた。ポンパはシンデレラのようなドレスだ。シンデレラに失礼だが。
「あっおめえはゲロ!」
「食事の場でゲロとか言うな、これだから育ちの悪い奴は!」
「ねえ茂、何でこの場にあの落ちこぼれ共が居るのよ」
とポンパドーデス。
「ここは上流階級しか入れないんじゃなかったの? ふさわしくない奴らは、はーやーく、追い出してよ!」
「ところがどっこい、コボレもここに入る権利があるんだな」
私はゴールドカードを掲げ、きらりと光らせた。
天堂茂は唇を噛み、「お前らなんかに支給されるとは何かの間違いだろう。父上に言い付けて没収してやるからな……」と負け惜しんだ。
天堂茂の方こそ、戦隊としては弱っちいのに、父親の名による優遇でこのような施設に入り浸っているのだろう。
「特別に教えてやるよく聞け。僕こそが正義だ!! 僕の父上率いるニッポンジャーは、星十字軍を討伐し、日本に平和をもたらした。僕もまた父上の後を継ぎ、世界に平和をもたらすだろう!! 僕こそが、正しいのだ!」
エリートファイブのメンバーは「そうですね!」とわざとらしく囃し立てた。どうせ団結力など無い癖に。
コボレは彼を無視し、「いただきまーす」と口々に言い、前菜に手を付け始める。
佐奈は青果を残し、肉だけをつついて食べていた。彼女は筋金入りの野菜嫌いなのだ。
「もしもし佐奈さん? 緑黄色野菜も食べましょうね」
「やだ」
豚は既にお皿の半分を食べていた。
「おいしい! 凶華くん、これは何ブヒ?」
「怪人肉と野菜を炎魔法で炒めた料理だぜ」
怪人肉!?
怪人の、人肉か?
私はその肉をフォークで突き刺し、目の前に掲げた。普通のベーコンに見えるが。
戦隊学園は広大な敷地で米や野菜を自給しているので食糧に困っていないが、そういえば肉はどこから調達しているのだろうと疑問に思っていた。まさか学園の肉料理は全て、怪人の肉だったりして……
みんな特に気にせず怪料理を食べていたが、私は授業で倒したのっぺら怪人のことを思い出し、気分が悪くなり、どうしても肉が食べられなかった。
私は肉、佐奈は野菜を残した。
すると偽善者の声がした。
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