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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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268 :げらっち
2024/06/29(土) 19:36:26
第25話 赤の世代
《凶華》
オイラの通っていたヴィランズ高等学校は、悪の高校だ。
オイラは悪の御曹司と言われ、スカウトを受け、ビラ校に入った。
悪って何だ?
正義って?
悪こそが正しいと言っている人が居た。でも正義には正しいという字が入っている。だからやはり正義の方が正しく、悪は倒されるべき存在なんじゃないかと思う。
悪こそが正しいと言っている人が居た。であればその人にとって、それは悪ではなく正義だ。矛盾している。悪にとって正義は悪だ。悪も正義も、おんなじだ。
勉強したけど、わからなかった。
唯一わかったのは、ビラ校はとにかく臭いということだった。血の匂いに便所の匂い、腐った匂いに1週間風呂に入ってない匂い。毎日鼻をつまんで登校したけど、耐えられなくて吐いてしまうこともあった。
だから転校した。元々家族も無いし気楽なもんだぜ。
戦隊学園は、イイ匂いで溢れていた。
視覚的にもカラフルで、黒に染められていたビラ校とは大違い。食事も美味しいし、広い敷地内、自由に寝ることができる。
衣食住がそろえば文句は無いが、遊び相手も欲しくなる。
オイラはイイ匂いがした奴に片っ端から声を掛けた。
「おいお前!」
「は、はいっ!?」
廊下ですれ違ったぽっちゃりした女。ほんのりいい香りがするぞ。
オイラはそいつの体を鷲掴みにして、匂いを嗅いだ。
「くんくん。メロンみたいな甘あいフレィバァ。嫌いじゃないぞ! オイラと遊ばない?」
「ええっ? スイマセン、この後自習したいってゆうか……」
「自習? 勉強なんてつまんないからしないほうがいいぞ! 遊ぼうぜ!」
「う、うん。いいよ……?」
「こら!!」
怒鳴り声。
メロンは駆け足で去って行った。
「あっ待って!」
「軟派しない!!」
メロンを追おうとしたオイラを静止したのは。
「ナナ、何すんだよ! 遊んでただけだろ!」
「完全な軟派です。あなたルックスがイイから嫌がられてないけど、そろそろ世間知らずを直さないと痛い目に遭うよ」
オイラよりちょっと背が高く、透き通るような白い肌の……
「オイラの飼い主! 遊んで遊んで!」
ナナはギリッと歯を喰いしばった。元々悪めの目つきが更にとんがった。
「凶華あのね」
ナナはオイラの両肩に、ポンと冷たい手を置いた。顔と顔が近付いて、ナナの色素の薄い目が、オイラを見定めた。
「明日は校外学習ってわかってる?」
「校外学習? 何それ」
「やっぱりわかってなかったか……」
ナナはハァと溜息をついた。ちょっとスパイシーな匂いがした。また辛口カレーを食べまくったな? 歯を磨いてもうっすら匂いが残っているぞ。
「コボレのみんなは準備で忙しいのに、あなただけ遊んでるのは感心しないのだけど」
ナナはオイラの首を撫ぜた。
ちべたいよ。
「オイラは遊びで忙しいの! あと忙しいからってエバるな! 忙しい奴は身分の低い奴だぞ……ん?」
あ! うまそーな焼き肉の匂い!!
「そこのお前! 遊ぼうおーん!」
オイラはナナをそっちのけで駆け出そうとした。でも何かに首を引っ張られ、息が苦しくなり、後ろ向きにずっこけてしまった。
「うげ!!」
「逃がさないよ? 飼い犬」
いつの間にやらオイラには首輪とリードがつけられていた。赤い紐が手繰られ、オイラは抵抗虚しく廊下を引きずられた。
「ぐるじい! 何すんだよ!!」
「私には逆らわないこと。私はコボレのリーダーだよ?」
足をばたつかせるオイラの頭を、ナナはポンポン叩いた。
「あー、もっと撫でて! くうんくうん!!」
「調子に乗らない」
ナナはオイラの髪を掴むと、しゃがみ込んで、オイラの耳に囁いた。
「準備が早めに終わったらいっぱい遊んであげるから」
「了解です、リーダー!!」
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