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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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269 :げらっち
2024/06/29(土) 19:37:18
《七海》
授業終わり、校舎の屋上、黄昏時。
最高にムーディなのだろう。沈みゆく陽は青春のシンボルだ。満ち足りた1日が余りにも早く終わってしまい、それでもまだ太陽の傘下に居たいから、学生たちは夕日に向かって走る。いくら走っても追いつけない癖に。
明日も会おうねと約束して、地平線に帰っていくお日様は、西の空をグラデーションで染め上げる。それはそれは綺麗だって、みんなが言っていたけれど、至高の色彩を視認できず、ただ眩しいだけの痛みとして覚知してしまう、スペックの低い目玉を持った私は、逆張りでもするかのように、光りに背を向け、影の方を見ていたのでした。
「こんにちは、夜。今夜もまた会えたね。私はあなたのほうが好きだよ。あなたは私に優しいものね」
「何やさぐれてるんだい」
私が東の暗い校庭に話し掛けていると、後ろから温かみのある声がした。
「そりゃ尖った気分にもなりますよ。本当は先生と一緒に夕日、見たいもの」
私は振り返った。そこには赤焼けをバックグラウンドにしたいつみ先生。私は強く目を瞑り、顔を伏せた。校舎を隔てて明るく染まる側の景色は、とても直視できない。早く沈み切ってくれ太陽。今日に何か未練があるのか。
私は闇の側に向き直る。私にはこっちがお似合いみたいだ。
「感傷的だね。明日が不安かい?」
「それもあります」
明日は校外学習だ。
入学してから3か月を学園の敷地から1歩も出ずに過ごしたせいで平和ボケしていたが、この世は怪人がうろつき、戦争が行われているのだった。
戦隊候補生同士潰し合っている学園内で強くなったとしても、井の中の蛙が蛇になったに過ぎない。外の世界には熊も虎も居るのである。鬼やドラゴンが居るかもしれない。
「本当に教えてくれないんですね?」
「何度も言った通りさ。明日の校外学習の内容は、まだ教えるわけにはいかない」
以前の私は無鉄砲な所があった。でも今は、一抹の不安を覚えている。
何故か。
コボレの仲間ができたからだろう。1人なら傷付いても耐えればいい。でも仲間たちが傷付けられたら、耐えられない。リーダーとして、みんなを守る責務がある。
「七海、今日きみをここに呼んだのは、確かめておきたい事があってね」
確かめたい事、何だろう。
「きみは戦隊学園の入学理由を、《色とりどりになりたいから》と言った。入学式のスピーチの様子を、僕は鮮やかに思い出せる。確かめたい。その気持ちは真(しん)かい? きみは学園に入る前、どんな暮らしをしていたんだい?」
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