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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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270 :げらっち
2024/06/29(土) 19:37:44

 私は風景の中に視点を据え置く場所を探し求めた。暗闇に覆われた時計塔が目についたので、そこをじっと見つめながら、深呼吸をして、話し出す。
「この場末の世界、障害者は生まれる事さえ許されていません」

 背後から声。
「うん。そうだね。賛同はしないが知っている」

「お腹の中に居る時点で障害があるかどうかは判別できます。判別できた時点で殺してしまうのが今の世は一般的です。昔はどうだったか知らないけど。産む側と生まれる側の負担を考えればある意味合理的ですよね」

 先生は少しだけトーンを押さえて、「それが現実だね」と言った。
 否定せずに聞いて貰えるのは有難い。

「でも私は生まれてきました。障害を、子宮か前世か何処かから携えて。私は親の顔を知りません。生まれてすぐに、捨てられたので。それでも堕胎せずに生んでくれた親には感謝です。私はシティ13に収容されました」

 シティ13は、障害者や戦争孤児が集められた区画であり、ニッポンジャーが議長を務める戦隊連合の施しによって営まれている。
 このご時世、親の無い障害者が生きていけるだけでも恵まれたことだ。
 私は小さな住宅で暮らすことができたし、小中学校に通うこともできた。毎日三食配給されたし、背が伸びれば新しい服を支給された。学園と同じく壁に囲まれ、外の世界から隔絶された、比較的安全な場所で育った。

 13は汚い井戸だった。大海を知らない少し力のあるガキが、弱いガキをいじめているのだ。

「生まれてこなければ良かった存在だと言われました。死ねとも言われました」

 先生は特に相槌を打たなかったが、頷いてくれたのが雰囲気でわかったので、視点はぶれさせぬまま話を続ける。

「でも私は、自分が生まれてこなければ良かったと思った事はありません。むしろ生まれられたことがラッキーでハッピーだったと思います。生きてカラフルになろうって決めたんです。虹を見たいんです」

 あんな狭い世界では終われない。
 違う私になろうと決心した。だから戦隊学園に入学届を出したんだ。

 すると、私の双肩に質量が乗った。
 陽光のように温かいいつみ先生の手が、後ろから乗せられているのだった。先生は私の真後ろで言った。
「では見に行こう。もう6色集まったんだろう? カラーサークルに足りないのは1つ、赤だけだ」
「赤?」
 赤、それはもしかして。
「いつみ先生?」
 私は振り向いた。その瞬間先生は消えた。赤い火の玉が残像を置き忘れ、階段扉に吸い込まれるようにして屋上を去って行った。
「ちょっ、いつみ先生!!」
 私は火の粉の足跡を追った。熱気から声が聞こえてきた。

「明日に備えて今夜は早めに寝るように♪」

「色々気になって寝付け無さそうなんですけど!?」
 すると、外側に開いていた扉が、ひとりでに閉じた。その後ろには、少年の姿があった。

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