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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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273 :げらっち
2024/06/29(土) 19:39:27
人間によって整備も把握もされていない、領域外の世界。
かつては、日本のほぼ全土が人間によって制覇されていたはずだ。だが今は違う。
赤の日に世界の半分が赤く塗られ、生命の住めない地になった。
赤の日を境に、怪人が世界を闊歩するようになった。
赤の日を起点に、正義と悪の戦争が行われるようになった。
赤の日、世界は変わった。
赤の日に、何があったのか。赤の日は、何故訪れたのか。
授業はぼかした表現ばかりで、重要なことは、ちっとも教えてくれないや。
わかるのは、シティや学園の外、壁に囲われていない場所は、死と隣り合わせだということ。
でも。
コボレンジャーは実力を付けてきた。
現にこうして、校外学習に出発する戦隊に選抜されている。
外の世界を戦い抜くのがプロの戦隊だ。コボレは確実にそれに近付いている。遠回りでもゆっくりでも進んで行くことができれば、虹を見られるようになる。私たちは死なない。
今回の校外学習、学年の全員が遠征するわけではない。
1年生だけで結成されている戦隊のうち、まだ戦ー1で勝ち残っている7戦隊32人に絞られていた。1002名の同級生のうち30分の1に満たない。
敗北を喫した戦隊は実戦は危険ということで、今回は留守番することになっている。
エリートファイブの5人も出発組に含まれているはずだったが、車内に彼らの姿は無かった。どうせ下等な他戦隊たちと相乗りは嫌だという事で、別の移動手段を使っているのだろう。私たちも天堂茂と一緒は嫌なので、ちょうど良い。
フロントガラスを見ると、バスの前方を、真っ赤なリムジンが走っていた。
「何あれー?」と、右隣の楓。
「あれは天堂任三郎理事長の乗るリムジンよ!」
そう答えたのは、通路を挟んで楓の右隣に座る桃山あかり先生。化粧とピンクのブラウスはいつも通りだが、ボトムスはいつもと違う。普段のチェックのスカートではなくパンツスタイルで足を組んでいた。
「1年生の校外学習は異例という事で、理事長自らわざわざ引率されることになったのよ」
天堂茂のお父上のお出ましか。
楓はそんなことどうでもいいらしく、明るく訊いた。
「あかり先生、おやつはバナナに含まれますかー?」
「逆でしょ? もうっ、イラちゃんたら!」
桃山先生だけでなく、青竹先生・緑谷先生・黄瀬先生と、Gレンジャーのメンバーがこぞって引率している。うち黄瀬先生はバスの運転を務めている。
そしてもう1人。
私はバスの後方を確認した。一番後ろの席にどっしり座り、近付き難いオーラと、漆黒のイロをまとっている教師。
ブラックアローンだ。
常に変身しており、素顔はわからず、何を考えているのかもわからない。コボレが外の世界に出ることを否定したアイツが、引率に加わっているとは。
まさかまた私たちの邪魔をする気か?
「おぇぇ……」
汚い声が私の思考を水入りにした。
私の前の席で、ビニールにえずいている公一。
出発前に酔い止めを飲んでいたが、効かなかったみたいだ。顔色が悪く、隣の席の凶華に背中をさすられている。
私は激励の意を込めて前の席をガンと蹴った。
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