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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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279 :げらっち
2024/06/29(土) 19:41:22

《凶華》


 クールだったナナが突如キレ、ホットになった。
 その瞬間、脳に突き刺すような刺激的な匂いを感じた。いや、匂いというか、指令だ。

 視覚と嗅覚は同じ五感の中でも大きく違う役割を持つ。
 百聞は一見に如かずという言葉があるように、視覚は万能かつ的確だ。多くの情報を同時に処理でき、なおかつ自分の意思で一点にフォーカスできる。
 嗅覚は曖昧だ。匂いを覚知したとして、その発生源が何処か突き止めるには、わざわざ対象に鼻を近付けて嗅ぐしかない。多くの匂いが充満していた場合、濃い匂いによって薄いものは掻き消されしまい、殆ど感じられなくなる。
 だが嗅覚は、シャープだ。匂いはときに四感を凌駕する。それは何も鼻で感じられるだけの匂いではない。フェロモンと言うんだったか。人格を操作するほどの、無臭の、強い香り。

 こんなのを嗅がされちゃあオイラも黙ってらんないな!!

「オイラの飼い主に何すんだ!!」
 オイラはエリートファイブのメンバーを押しのけ、ナナを拘束していた2人の男を、両手でドンと突き飛ばした。
「くっ、何だこいつ!」
 2人は地面に足を付けたまま、5メートルくらい押し飛ばされた。土煙が躍る。
「ブヒ~! 僕も顔負けの良い突っ張りブヒ!!」

 天堂茂は顔をしかめた。
「星十字軍の生き残りめ。父上を継ぐ僕が、今ここで成敗してやろう! 変身するぞ、お前ら!!」
「はい!」
 男5人は横一列に並び、「ブレイクアップ」と唱え、赤い戦士に変身した。

「エリートファイブ!」
「エリートフォー!」
「エリートスリー!」
「エリートツー!」
「エリートワン!」

「馴れ合いの青春など取るに足らない下等な存在!! 戦隊の頂点を取り、春を真っ赤に染め上げる!! 赤春戦隊エリートファイブ!!!!!」

 奴らが大仰に名乗っている間にオイラはササッと変身を済ませた。
「コボレスター!」

「やれ、お前ら!」
 天堂茂が変身したエリートワンは、他の赤い戦士の背を押した。
「え、茂さん。全員で戦うんじゃないんですか?」
「何を言う。僕は司令官、お前らは兵士、格が違うんだ!! ほら戦え! 星十字凶華を倒した奴には父上が褒美を下さるだろう!!」
「よ、よし!」
 4人はオイラににじり寄ってきた。

 お前らなんかとは遊びたくも無いが、いいぜ。ナナをやられたしかえしにかわいがってやんよ。

「あーそびーましょ!!」
 オイラは4人の足下に紫色の魔法陣を出現させた。その円周が四角くなった。
「○✕ゲームしましょ!」
「ま、まるばつゲーム!?」

 魔法陣は9マスに分割された。
「お前らが先攻だぞ!」

 4人の男は毒気を抜かれたようだった。
「え、えーと……」
「こんな低レベルな遊びはした事無いよ……」
「考えろ、真ん中を取るのがセオリーだろ!」
 魔法陣の上に立っている赤い男たちは、赤ペンで、真ん中のマスに○を書いた。

「じゃあ次オイラの番な。せーの、✕✕✕✕✕✕✕✕!!!」

 オイラは魔法陣の周りを1周し、4人の立つ中心を囲む8つのマス全てに✕を書き殴った。
「○罰ゲームおしまい。お前らの完敗」
「待てルールが違うだろ!!」
 4人は何か抗議している。でも陣内で✕に包囲されてしまった以上こいつらは動けない。

 オイラはにっこり笑った。
「ナナをいじめた奴らは地獄に堕ちろよ」

 魔法陣が破裂し、地の底より紫色の炎が噴き上げた。間欠泉のように高く高く。4人とも変身が解け、手足をばたつかせ、お空に飛んで行く。
「逃がすか!」
 オイラは後ろ脚を屈曲させ、飛び跳ねた。瞬く間に、4人と同じ高度。
「闇魔術:ふくわらい」
 オイラは前脚を振るい、驚愕する彼らの顔からパーツを外していった。重力に従い自由落下。4人は地面にぶつかった。オイラは着地成功。目の前には呆然と立つ天堂なんたら。
「よう! ゲロ眼鏡」
 そいつは、壊れた案山子のように倒れている自戦隊のメンバーを指さして言った。
「あ、あいつらはどうなったんだ?」

 4人の男は喘鳴さえせずに倒れている。1人は右眼を、1人は左眼を、1人は鼻を、1人は口を外されて。
「取っちまったけど、返してやってもいいよ。はいこれ」
 オイラは手を差し出した。手の上には、4人から取った顔の部位が乗っていた。ゲロはひぇッと言って後ずさった。

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