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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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281 :げらっち
2024/07/12(金) 20:43:22
第26話 グレーゾーン
本日は曇天。私にとってはちょうどいい天候だ。
世界一ののっぽが背伸びして、空という広大な天井に、薄い灰色の絵の具を塗ったような、何処まで行ってもグレーな空。
青天白日とは言うが、白いのは曇天だ。曇天白日。
外の世界。
私はリュックを背負い直した。
天堂茂を下して、良い気分。まさか校外学習に出かけた7戦隊のうち、最有力のエリートファイブが一番に落伍するとは、学園の誰も予想しなかったろう。
「それじゃ引き続き、他戦隊を探そうか」
私は軽快に歩を進めた。草木に覆われた世界を藪漕ぎし、進路を切り拓く。
突如目の前に赤が広がった。
理解が追い付かない。自然にも人工物にも見えない、ただただ赤い地が一面に広がる。
頭は回らぬまま脚は歩を進めてしまった。得体の知れない赤い地に足が着きそうになる、その直前、後ろから引っ張られた。両足がそろい、前のめりに倒れそうになる。リュックが引かれ、ナナメ45度で止まった。
私の目と鼻の先に無機質な赤。
「やめとけ」
背後から声がする。リュックを引っ張って、鋭角のピサの斜塔を支えているのは凶華のようだ。
「足を着ければ、死ぬぞ」
強く後ろに引っ張られ、尻餅を突いた。
凶華が刃物のような鋭い表情で私を見下していた。この犬のこんな表情は初めて見た。
私はへたり込んだまま訊く。
「何あれは。血?」
「血なら良い。血は生の証だから。死んだとしても、かつて生きた証だから。この赤は、死ですらない。生死のサイクルに存在しない。始まりから終わりまでずっと赤信号。少しでも踏み込めば、お前も生命のサイクルを外れた赤の一部と成る」
ぞわ、恐怖が体を撫ぜた。
その恐怖は赤き地への恐れが半分、忠実だった凶華が私に高圧的になった事への怖さが半分だ。
凶華はシニカルに笑った。
「そんな無警戒でよくリーダーが務まるな?」
「言うねえ……」
私はお尻を払い、立ち上がる。
「助けてくれてありがとう。でもお言葉を返すようだけど、外の世界は初めてだし、知らなくても無理なくない?」
凶華は外の世界を生きてきたのだから、そんなことは常識だろう。でもシティで育った私には知りえないことだ。
賛意を求めて皆を見る。するとコボレの皆は、意外な反応を示した。
「凶華くんの言う通りですよ。外の世界で真っ先に気を付けねばならないのは、赤く塗られた地を避けること。赤ちゃんでもわかるジョーシキでしょ?」と佐奈。
「せやねんな。赤の地に突っ込んで行くとかどうかしとるわー。流石にお前がリーダーでいいか疑いたくなったで?」と公一。
「それは言い過ぎブヒけどね……」と豚。
え!!?
何だかアウェイだ。
楓の方を見る。
「楓、あなたは知らなかったよね?」
この子だけは私の味方で居てくれる気がした、が。
楓は目を逸らした。
「あー……知ってたよ。赤の日に赤く塗られた地は、アブないって」
まさか私の知識が楓にも劣るとは!!!
いや、その言い方には語弊がある。別に楓を舐めきっているわけではない。
それでも自分1人が世間知らずだったことを思い知らされたようで、穴があれば入りたかった。
「わかった、ごめん、気を付けるよ」
私の顔はレッドに染まっていたかも知れない。
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