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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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289 :げらっち
2024/07/12(金) 20:46:55
とにかく長い距離を走ったように感じたが、実際は50メートルと離れていなかっただろう。
背中を預け合って怪人と対峙する、公一と豚の姿があった。公一は持参したらしい愛刀コウガを構えているが、その刃はブルブルと震えていた。
「どけよ!!」
凶華は公一と向かい合っていた怪人の背中にキックをお見舞い。怪人はくの字に曲がって倒れた。
私と佐奈は膝に手を突いて荒く息をした。
「オイ七海! どういう事やねん!! ここ怪人の巣窟やったんか?」
「みたいだね。とにかく、みんなそろって早くここを出ないと。楓は?」
「し、知らん。お前たちと一緒やなかったん?」
「えっ!?」
楓はどこだ? 目を細めて辺りを見渡す。あの青が、灰色の街の彼方に感じられた。
「楓を助けないと!」
「でもそっちは街の出口とは反対だぜ? 早くここを出るんじゃなかったのか?」
凶華は、私たちがさっき居た緑の高台を指す。楓とは真逆の方だ。
「みんなそろって、が抜けてるよ!」
「それともう1つ気になりますよね」
そう言ったのは佐奈。
「さっきの爆音。怪人が起こした物ではないと思いますが」
ドォン!!!
言う傍から、再度の爆音。
皆一斉にその方向を見た。駅舎が完全に倒壊し、灰色の巨大な機械が現れた。あれは戦車か、気動車か。きちんと視認している暇は無い。
「楓を助けて、みんなで逃げる!!」
私は青を感じる方に走った。
「仕方ねえなあ!」と凶華。
「ブレイクアップ!!」
私たちは変身して走る。怪人は私たちを追尾し、包囲網を狭めてくる。
「僕が道を開く!!」
豚は怪人を、自慢の突っ張りで散らす。
「悪いが邪魔だ、ブヒ!!」
鉄球で殴るような激しい張り手に、肉片が飛ぶ。包囲を穿った。
「今だ! みんな急げ!!」
マシンが砲撃した。
目の前で大きな爆発。数体の怪人が消し飛ぶ。でも一刻も早く楓の元に行かなきゃという思いが、勇気を呼び起こした。私は真っ黒い爆炎の中に突っ込み、ひたすら走った。
「七海!!」後ろから公一の怒鳴り声。
視界不良、楓の青を見失う。
ぬちゃ、何か柔らかい物を踏んだ。
足元を見ると、怪人の、顔だった。
火傷にまみれた怪人は目を見開き、すきっ歯から咆哮を漏らした。
[バ亞!!]
「うわ!!」
私はすぐに足をどけ、無我夢中で走った。煙が晴れる。後ろを確認すると、世にも恐ろしい物を見た。
怪人が這い這いで追いかけてくる。その口はハエトリグサのように大きく開き、口の中は真っ赤に染まっている。
「!!!!」
私は声にならない声を上げ、西も左も南も右もわからずとにかく街の中を行き当たりばったりで逃げた。楓はどこ、皆はどこ、もう何もわからない。10歩走るごとに後ろを向く、ずっと付いてくる黄泉の国の這い這い。
「ブリザード! スパイラルアイス!!」
魔法を投げ付ける。だが手元が狂い、当たらない。当たってもそんな物お構い無しで追ってくる。
「ひぃ、ひぃ、ひぃ」
私は涙目で逃げ続ける。このまま地球一周してしまうんじゃないかというくらいに走ったが、絶対止まれ、赤信号。私は急ブレーキ。
目の前に広がる赤。
愕然とした。この街も半分が塗られていたんだ。塗ったくられて瓦礫さえ無い真っ赤な地平。
赤き地には近付くな、赤の地に追い込まれると、逃げ場が無くなってしまう、そう言ったのは豚だったか。
恐る恐る振り向くと、怪人は猛牛のように突っ込んでくる。怖くて怖くてたまらないが、もうちびる体液も無い。
覚悟を決める時だ。
「ツララ、ブレイド」
私は手から氷柱の刀剣を生やした。ふぅ、ふぅ、息を整える。
相手は怪人。生命ではなくとも、もしかしたら自我があるかもしれない。考える葦かもしれない。僅かな躊躇いがあった。だが生きるか死ぬかなら、生を選ぶ。怪人を殺してでも。
私は剣を構え、迎え撃つ準備をする。四つん這いの怪人が5メートルに迫る。大丈夫だ、できる。2メートル。いやできない。怪人が生き物ではなかったとしても、殺すなんてできない。1メートル。甘ったれるな七海。20センチ。やらねばお前がやられるぞ。1センチ。体が勝手に動いた。
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