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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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293 :げらっち
2024/07/12(金) 20:55:56
私は声のする方にひたすら走った。
「たーすーけて」
「うげ!?」
そこに居たのは、赤いランドセルを背負った、40代くらいのおっさんだった。ピチピチの体操着。胸のゼッケンには、ネームペンで書かれたPの文字。半袖短パンから四肢が突き出している。腕も脛も毛むくじゃらなのに、頭頂部はハゲである。バーコードハゲ。角ばった顔に卑劣そうな目。この男の喉がだみ声を発していたなら平穏無事だったろう。見た目に反し余りにもキュートすぎる声がミスマッチで、その上女子小学生のようなコスチュームに拒否反応を起こして、
「きもい」
ついそう言ってしまった。あまり口にしたくない言葉だがこれ以上的確な表現はネットサーフィンで太平洋を横断しても見つかるまい。
その男は銀歯を見せてニヤつきながら私にリボルバーを向けていた。何が何だかわからないが、ヘルプミーという状況でない事だけは一目瞭然だった。
「きもい? 欲しかった反応ありがとお♡」
ゾワッ。何ならきもすぎて認知症になる所だった。きもいきもいきもい。でもこれ以上関わりたくないので、何もリアクションしないことにした。
遅れてコボレの仲間たちが追いついてきた。
「助けにきまし……ブヒィ!?」
「うわ、七海ちゃんナニコレ?」
「飛んで火に入る夏の馬鹿」
男の声は段々と見た目に相応しいしゃがれボイスに変わっていった。
「この程度の罠にかかるとは戦隊学園の教育水準も落ちるとこまで落ちたものだねえ、大馬鹿三太郎」
私は自分の額をパンと打った。
馬鹿だ。
罠だ。
「言っただろ? 面白い匂いがムンムンするって」
凶華が私の背中を、ほら見ろと言わんばかりに強く叩いた。
「匂いで判ってたんならそう言ってよ。私たち全員の危機だ」
「オイラはちゃんと止めたぜ? 判断はリーダーの責任だろ? 世間知らずで痛い目に遭ったのはお前の方だったな」
以前私は、学園内での凶華の行動を世間知らずと罵った。外の世界では立場が逆転するとは。
「あいつもメカノイアの一味?」
「違うだろうな。メカノイアは力押しで戦争するタイプでありこんな馬鹿げた罠は仕掛けねえ。他の組織も潜んでやがったな?」
それじゃまるで悪の組織のサラダボウルだ。
「これはこれは凶華ちゃん!!」
体操着男は甲高い声で言った。
「ホープでありながら、ヴィランズ高等学校を辞めて戦隊学園に寝返った悪の御曹司様ではないですか。ここで会ったが5時限目」
男は銃口を凶華に向けた。
「オイラに銃を向けたら死ぬけどわかっているよな?」
「死ぬ? どっちが」
パン、トリガーが引かれた。凶華は「ブレイクアップ!」と変身し弾をかわす。
「パンドランドセル・オープン」
男の赤いランドセルが開いた。中から銀色のアーマーが飛び出し、中年の肉体を覆った。
「パンドライザー!!」
男は戦隊のような、銀の戦士に成った。凶華は臆さず対峙する。
「○✕ゲームしましょ!」
あの時のように、9マスの魔法陣が発現する。これは凶華の勝ち確か?
「お先にどうぞ!」
「じゃあ遠慮なくぅ!」
パンドライザーは魔法陣全体に大きくPとサインをした。
「征圧完了!!」
「何だ? ずるいぞ!」
魔法陣はガラスのように砕け散り、同時にパンドライザーは凶華の胸を掴み、ランドセルのジェット噴射で大きく飛び上がり、凶華を思い切り地面にぶつけた。
「きゃうん!!」
「凶華!!」
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