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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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294 :げらっち
2024/07/12(金) 20:56:08

 凶華はクレーターの中に頭から突っ込んで沈黙していた。

「今年の生徒はどんなものかと思ってちょっと期待しちゃってたけど、ぜーんぜんダメだねえ♡」

 パンドライザーが指示を出すと、私たちの周囲に20、いや30もの仮面を付けた戦闘員が現れた。
 戦闘員。授業で習ったことがある。悪の組織が保有する、個性を排除した、戦闘の為だけの人員だ。OSと書かれた黒い仮面で顔を隠し、銃やナイフ、メリケンサックなど武器を持っている。
「OS……改造実験法人オスですか」
 佐奈が私の後ろで呟いた。
「メカノイアもオスも、きっと校外学習をリークして張ってたんですね。厄介な相手ですよ」

 パンドライザーは言う。
「選ばしてやる。ここで死ぬか、捕虜となるかだ。仮にも戦隊を志すお前たちなら戦いを選ぶかもしれないが、多勢に無勢、無駄死にするだけだよお。まだピチピチ若いんだから命は大事にしようねえ?」

 初手で必殺技を撃ち畳みかけようにも、既に凶華が戦闘不能に陥っている。5人ではコボレーザーも真価を発揮できない。
 白兵戦を展開する必要があるが、奴の言う通り多勢に無勢だろう。
 皆を守るために、降参という選択肢が無いでも無い。でも、降参した場合、どうなるか?

 ヒーローを養成する戦隊学園は悪の組織にとって、目の上のこぶやエスカレーターを降りた直後に立ち止まる客程邪魔だろう。
 私たちを人質に学園に要求を飲ますなり、拷問して学園の機密を漏らさせるなりするつもりだろう。その場合、死よりももっと悪くなる。
 それに私は、しばらく、死ぬ予定は無い。

「白旗は振らないよ。悪の手には落ちない」

「その通りや!!」
 公一が相槌を打った。

「血を見ることになるのは残念だねえ♡」
 パンドライザーは、そんなことは予想通りというふうだった。

 すると木々の向こうから戦闘員が1人走ってきて、パンドライザーに進言した。
「アカの奴らも偵察に来ているようです。衝突だけは避けたいと存じますが」
「ふん、さっさと蹴りを付ければ済む話だ」
 何の話だろう。
 それはさておき、パンドライザーは発破を掛ける。
「あいつら殺しても構わんが、生け捕りにした奴には特別手当が加算されるぞ! 死ぬ気でやれよ!!」
 戦闘員たちは私たちを取り囲む円周を狭めた。賞与の為に命を捧げる戦闘員とは世も末だ。

「聞いてんのか? 死・ぬ・気でやれよ! 手を抜けば人事考課でオーソ社長に雷でも原爆でも落とされるぞお! 貴様ら戦闘員の命など書類1枚より軽いんだからなあ!!」

 ブラック企業なのは判っていたが、私はその言葉に違和感を覚えた。私は気に入らないことはとことん追求する主義だ。

「あなたたちが最低のクズの悪の組織なのはわかってるけど、部下に対してその言い方は無いんじゃない?」

 パンドライザーは無駄に美声で「なんてえ?」と言ったが、その後低い声に戻って答えた。
「戦闘員なぞ上の指示に従うだけの駒、将棋の歩兵よぉ。組織の命令ならば死ぬことすら厭わない。戦争は全体の勝利が目的であり、個々の意思は重んじられない」

「戦いに個々は必要ないってこと?」

「そうだ」

「じゃあアンチテーゼ。私たちは戦隊。違うイロが混ざることで、力を発揮する。いくよみんなブレイクアップ!!」

「ブレイクアップ!!!」

「コボレホワイト!!」
「コボレブルー!!」
「コボレイエロー!!」
「コボレグリーン!!」
「コボレピンク!!」

「虹光戦隊コボレンジャー!!!!!」

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