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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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299 :げらっち
2024/07/12(金) 20:58:06
「みんなは?」
「あっち!」
私と楓はコボレメンバーと合流するため木の合間を歩く。
この森も、文明の跡地のようだった。草木に覆われたアスファルト。車。有刺鉄線。民家。
人類が半滅した後、自然はその隙間を埋めた。科学と自然による地球の陣取りゲームは、自然の圧勝だった。
その時、私の心がぞっと飛び跳ねた。氷の手で首を鷲掴みにされるような感覚。
黒が近くにある。それは癌細胞のように目立っていて、周りを侵食している。
緑に食べ尽くされた標識の隣に立っていたのは、黒の戦士ブラックアローン。
黒いマントをはためかせた大柄な男が、私たちの前に立ち塞がった。体も心も真っ黒で、黒いマスクの赤い単眼が、無機的に私たちに向けられている。
「大人しく帰らなかったのか」
私は共感覚のせいで、黒を極度に恐れている。
でも怖がる必要はない。ブラックアローンは仮にも先生だ。敵ではない。はずだ。
私は「はい」と答えた。
「戦隊になれば、命を落とす。生半可な気持で挑もうとするならば帰れ」
「戦わないなら戦隊になる意味が無いです」
勇気を出して。青竹先生との論争と同じように、自分の意見を言えばいい。
「先生、あなたは最初に会った時から保守的なことばかり言っていますよね?」
戦闘を軽んじいざ戦場に出れば、死ぬ。我輩は何度もそのような馬鹿を見てきた。
白い貴様には、七色の虹は掛けられん。
ブラックアローンが言うのは、そのようなことばかり。
「先生は、どうして戦隊になったんですか?」
ブラックアローンはしばしの間、黙った。
彼が膨大な選択肢の中からチョイスしたのは、あろうことか、質問とは無関係なレスポンスだった。
「……貴様に虹は作らせん」
また妨害厨か。
「私の過去は真っ白です。これから色を付けるって決めたんです」
「では塗り過ぎに注意しろ。貴様の未来は真っ黒だ」
「いつもそんなこと言って!」
私は喰い下がった。
「あなたは地面ばかり見ているから視界に黒しか映らないんだ! 現実がつらくっても私は上を見る! 見てもないのにそこに虹は掛かって無いなんてそんなことは言わせない」
「見てもないのに、か」
ブラックアローンは少しだけ顔を上げた。マスクの下の眼が空を見たのか、それはわからない。
「では、例えば貴様が虹を見たとしよう。次は何を目指す?」
「え?」
思いもよらぬ質問に、私は口ごもった。
仲間を集め七色の戦隊を作る。虹を作る。カラフルになる。それが私の目標であり、最終到達点である。ではその夢が叶ったら、次はどうするか。
「虹が掛かるのは雨後の一瞬だ。そうだろう」
いつの間にか、ブラックアローンは私の目の前に移動していた。かなりの巨体が私を見下ろしている。
「虹が消えたら、また暗雲が立ち込める。そうだろう?」
恐怖。
「いいえ、晴れます」
そう言ったのは私ではなく、私の親友だった。
振り向くと、楓が仁王立ちして、ブラックアローンを睨め上げていた。
「あたしがてるてる坊主作るから。絶対に晴れます」
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