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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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300 :げらっち
2024/07/12(金) 20:58:26
私たちは再びリュックを背負い歩いていた。
どんなに急いでも、日没は私たちを待っちゃくれない。残酷なことに、辺りはどんどん暗くなっていた。
「そろそろ野営できるところを探さないとまずいぞ?」と凶華。
外の世界に街灯などあるわけなく、夜になれば完全なるブラックボックス。私たちは怪人の標的と成り果てる。
急いて草を掻き分けると、レンガにぶち当たった。
「建物だ!」
「天の助けや! こん中ならちっとは安全やろ!!」
私たちはレンガ造りの塀に沿って進み、ツタに覆われた門を見つけた。
門の脇に、銘板があった。暗さと汚れでよく見えないが、辛うじて○○原小学校と読み解くことができた。
「今夜はここに泊まって、明日また学園を目指そう」
錆びた門を押し開け、草の生え放題になった校庭を抜ける。
校舎は一部倒壊していた。ここも戦争の被害や、怪人の襲撃を受けたのだろう。
建物に入ると、壁に絵が並べて飾られていた。低学年の児童の作品だろうか、クレヨンをこすり付けて描いた似顔絵。パパ、ママ、ありがとうなどと書かれている。それも一部が焼け焦げていた。
笑顔の痕跡がそこにはあった。
「使えそうな部屋を探そう」
3階建ての校舎、最上階に比較的荒れていない教室を見つけた。佐奈が電気魔法で灯りを点けた。
戦隊学園の教室に比べると、狭く思える。それは私たちが大きくなった、高校生の体付きになったということだろう。
ちっぽけな木の机と椅子が、埃を被っていた。座ってくれる子供たちは、もう二度と戻ってこない。机たちは少し寂しそうだった。私は椅子を引き、軽く埃を払うと、腰掛けた。
「ここを寝床にしようか」
「うへぇー、疲れたぜ!」
楓が倒れるように座り込んだ。他のメンバーも限界というように倒れ込み、足を投げ出す。
「喉乾いたブヒ~!!」
「知ってると思うけど、水はもう無いよ」
全ての水筒が空になってから、もう1時間以上経っているだろう。
「カエの魔法で出せるよな?」
「あ、確かに! 凶華くん頭イイね!!」
楓はコボレブルーに変身。私は空になった水筒を机の上に置いた。楓は手のひらを水筒の口に付けて唱える。
「ウオデッポウ!」
だが、水は出ない。
「何しとんねん、しっかりしろや!」
「つ、疲れてるんだからしょうがないじゃん!」
「疲れてへんかったら上手く行くんか? いつもそんな程度なんとちゃう!?」
「こらこら、仲間割れしてどうするの」
疲労でイライラしてしまう気持ちはわかるが、ここは落ち着かなくては。
楓は唸りながら何とか水を絞り出す。ちょろちょろと水筒に水が注がれていく。
「手から出た水なんて無理なんですけどうちパスで」と佐奈。
「何だよ! 汚くなんてないよ!!」
楓が怒鳴ると、制御が効かなくなったか、水が四方に飛び散った。
こんな不器用な子が、私の命を救うほどの魔法を使った、というのは未だに信じられないことだ……
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