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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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320 :げらっち
2024/07/15(月) 16:26:55
《楓》
帰還から早5日。
カツン、カツン。
あたしは歩く。
カツン、カツン。
保健室。
「あああ……ぅああ……」
「押さえて!!」
「はい!」
悲痛な悲鳴。ベッドに押さえ付けられている生徒。目元に巻かれた包帯は赤く染まり、片腕が無い。
「竜が……竜がぁあああああ……!!」
「鎮静剤!!」
校医のヤブイ先生に注射を打たれ、患者はようやく落ち着いてきた。
毎日ここに通っているから、痛々しいものを見るのにも慣れてきた。
カツン、カツン。
これは靴音じゃない。杖を突く音。
カツン、カツン。
白いパーテーションで仕切られた真っ白い空間を、奥まで進む。白いベッドの上、白い体が横たわっている。
まるで白に擬態してるみたい。なんてことを言ったら、白いことを気にしているあの人は怒るかな。ま、怒らせてからかうのも面白いかもだけど。
「元気?」
七海ちゃんは、白い枕に白い髪を乗せて、白い壁を見ていた。つまり、あたしに背を向けていた。
「元気じゃない」
淡白な答えが返ってきた。無視されなかっただけまだいい。
喋れるほどには元気になったということ。七海ちゃんの冷たい声はかまくらの中に居るみたいにあったかいから好き。
七海ちゃんは顔をこちらに向けて、声を掛けてくれた。
「そっちこそ大丈夫?」
ほら、あったかい。
「痛いけど生きてる! 五体ほぼ満足!」
あたしは松葉杖と左足の三脚で体を支え、右足を浮かせながら、ウィンクして無事をアピールした。
「まだちょっと痛いけど、もうこんなに回復した。驚異の生命力! 若さは強さ!!」
あたしは杖でバランスを取りつつピースマークを送る。メールの文末に絵文字を添える感覚で。
七海ちゃんは目つきの悪いまま、口だけでにこり笑った。
「ヤブイは癒しの水使えなかったの?」
「うん。ダメだった」
「医者にも使えないような魔法を、どうして楓が使えたのかな?」
「あたしが七海ちゃんを想う気持ちが奇跡を起こしたんだよ!!」
校外学習で七海ちゃんが致命傷を負った時、あたしは蘇生魔法でそれを救った。
あの時のことは、今でも信じられない。
「七海ちゃんは調子どうなの? まだ不安定?」
5日前、七海ちゃんは学園に帰るなり持病の発作を起こして倒れた。
「不安定というより、悪いので安定してる」
あたしはベッド脇のパイプ椅子に腰掛けた。
何て硬い椅子だろう。お見舞いの生徒を長居させない作戦だろうか。
あたしは持参した《週刊☆戦隊学園》を広げて、その内容を七海ちゃんに話して聞かせた。
「すごいよ! 戦ー1もついに残り5戦隊! しかもそこにコボレの名前が載ってる!!」
「やったね最高。戦隊名読み上げて?」
「うんいいよ」
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