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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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322 :げらっち
2024/07/15(月) 16:27:39
「七海まだ調子悪いん? 発作とは別に何か気に病んでるようやな」
そう言う公一くんはなんだかカレシぶって癪だから、適当な返答。
「さあ? マタニティブルーじゃね?」
あたしは公一くんに付き添われながら女子寮に帰っていた。もう夕方。
あ、寮の建物が見えてきた。もうお別れか。寂しいな。最後に一芝居……
「おっとぉ!」
あたしはわざとバランスを崩してよろけた。
「楓!」
隣に居た公一くんは咄嗟にあたしの脇の下に手を入れ、支えてくれた。腐っても鯛、中古でもベンツ、ひょろひょろでも男子。力がある。
ごつごつした手で掴まれると、ワニに抱擁されてるみたいでドキドキする……
「ありがと公一くんっ!」
「気い付けえや」
あたしの目と、公一くんの目が合う。
あたしはウィンクした。
公一くんは目を逸らし、カエルの卵を見た人のような表情をした。
もう、恥ずかしがっちゃって……!
「それでさ、楓、1つ言いたいことがあるんやけど……」
「なになにっ?」
公一くんはパプリカみたいに顔を赤くしていた。
まさか、愛の告白!? 七海ちゃんからあたしに機種変しちゃう気ー!? いいよ、あたしはいつでもカモンだよ!! なんなら七海ちゃんよりサービスいいよ! 七海ちゃんに内緒で密会とか!? キャードキドキしちゃう! 罪悪感でとろけちゃうね!!
「頼みがあるんやけど……」
「頼み? 何でもこの楓ちゃんにお任せ!!」
キスしてほしいとか!? 七海ちゃんとキスしたいから、その練習台に!? それでもいいよ一度キスしたらもう、楓ちゃんにメロメロになっちゃうから!!!
あたしは口をチューの形にして待った。
でも公一くんは予想外のことを言った。
「は、歯ブラシを……七海の歯ブラシを、こっそり、持ってきてほしいんやけど……」
「?」
なんじゃそりゃ。
公一くんは人差し指同士をツンツン。
「お前なら持ち出せるやろ? 今七海おらへんし」
「そりゃできるけど。歯ブラシなんて何に使うの?」
「えーと、それは……」
公一くんは髪をガリガリ掻いた。
「使い古した歯ブラシはシンクの掃除に使えるやん!!」
「へぇー……公一くんって金持ちなのに貧乏臭いんだね。明日持ってきてあげてもいいけど……」
「よ、よっしゃ、七海には絶対バレへんように頼むで!!」
「OKやん」
「変な関西弁使うなや……」
これより先は男子禁制区域。有刺鉄線が張り巡らされており、入り口にはガードレンジャーが立っている。
「こっから1人で大丈夫か?」
「うん。なんとか平気! じゃあまた明日!!」
あたしたちは本物のカップルのように、手を振り合って別れた。
「よし」
あたしは公一くんが視界から消えたのを確認すると、右足を地面に着けて松葉杖を抱えた。
二足歩行開始。足はもう治っていた。公一くんに介助して貰えるからまだ痛いふりしてる。男の子は怪我した乙女に弱い。はず!
こっそりのお願いをしてくるってことは、公一くんの気はだいぶあたしに向いてるってことだよね!!
七海ちゃんはともかく、あのヒキコモリのさっちゃんにさえ豚というお相手が居る。コボレガールズであたしだけカップルになれないなんてことがあっていいはずがないんだ。
まあ、もし公一くんがダメでも、あたしにはパートナーが居るけどね!
「ふふん♪」
あたしは鼻唄交じりに寮に入り、エレベーターで5階の自室に戻った。
ポケットから鍵を出す。鍵はチェーンでスカートにくっ付いていた。以前あたしが鍵を無くし、七海ちゃんと2人で夜通し探したことがあった。あの後七海ちゃんはあたしが鍵を無くさないように、チェーンを付けることを義務付けてきたのだった。
扉を開ける。
「ただいま」
誰も居ない部屋に向けて挨拶する。誰も居ない?
いや、居る。
夕日の射し込む薄暗い室内に、大きなシルエット。
[キシャアアアア!!!]
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