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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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326 :げらっち
2024/07/15(月) 16:29:06
うちは変身を解いて、咳払いすると、チェーンを掛けたまま、ドアの鍵を開けた。
解錠するなり外からドアノブが引かれる。でもチェーンのお陰で半ばでガッと止まり、訪問者は嫌な顔をした。
半開きのドアからこちらを覗き込んでいる女は見知った顔。というより、うちが誰よりも恨んでいる顔。伊良部楓に天堂茂に両親、気に入らない奴はいっぱい居るけど、その番付で一人横綱に君臨しているこの顔は。
「ポンパドーデス」
「ポンパドーデスじゃない、ポンパドールです! ていうかそれは髪型であって名前じゃないし」
うちの所属する機械クラスの首席ポンパドーデス。本名は忘れたし、わざわざ覚えたくないし、七海さんの付けた異名が流通してる。でこっぱちで、薄茶色の頭髪を分けて垂らしているのが恐ろしく似合わない。まあこいつに似合う髪型なんて無いが。禿げろ。
この女は1年生にして、学園のロボ市場のトップに立つデザインジャーのリーダーでもある。うちの方が天才なのにこいつの能力が評価されてるのムカつく……
性格はカス。フンコロガシに転がされればいい。地味に背高いの嫌いポイント。こいつの身長は171.4と高め。うちは学園の機密ファイル「身体測定結果」をハッキングしてるので全生徒の身長を知っている。うちは一番低かった……
「何でここに居んの、チビ」
うちはドアを蹴っ飛ばした。
「チビって言うな。のっぽ」
「あら誉め言葉をどうも。大は小を兼ねるけどあーたみたいのは一生ビッグになれないのよ」
うちは致死量の電力を溜めておく。
「さっきからスゴイ物音がするから様子見に来たけど、何であーたが居んのよ」
「戦隊メイトの部屋に来ちゃ悪い? 同性の他の部屋に入るのは禁止されてないと思うんですけど。左様なら」
うちはドアを閉める。ポンパドーデスのドカ足がストッパー代わりに挟まれ、閉まり切らなかった。
「怪しい。中見せなさいよ。何か隠してるでしょ?」
「アンタなんかに入られたくない」
「生意気! ブレイクアップ!!」
ポンパドーデスはメカニイエローに成る。
「ザッピング!」
「きゃうっ」
ドアノブに静電気が走り、うちは触っていられなくなり手を離した。チェーンが切断され、ポンパは部屋に闖入した。
恐竜によって荒らされた部屋。
「きったな。へぇ~、茂がよく、落ちこぼれ共は部屋も汚いのだろうな、って言ってたけど、本当なんだ」
「余計なお世話ですよ心が汚いゴミ」
「下がれエレホルダー!!」
「ギャ!」
電気がうちを押し飛ばし、四肢を壁に釘付けにした。標本の昆虫のように、動けない。
「ベッドに居るのは?」
ベッドの下段では伊良部楓が気絶したように寝ている、というより、本当に気絶してる。
「ああ、茂がよく話してる学年最下位の落ちこぼれ女ね。寝顔もブッサイク! 学年女子1位の私とは雲泥の差ね。私は雲の上の存在。あーたは泥沼で溺れてる虫けらってワケ」
うちの心はふつふつと煮沸してきた。
伊良部楓は確かに馬鹿で、ムカつくくらい要領が悪く、自分勝手で、趣味がきもい。
でもポンパドーデスほど、クズじゃない。
「雲の上に居すぎて自分の居場所がわからなくなったんじゃない? そこ愚者が集う死の国ですよ」
「エレストライク!!」
ポンパドーデスはこっちに向けて腕を振るった。
電気の釘が、うちの胸に打ち込まれた。
「あううううううううう」
壁に磔にされて動けない。電気が胸に喰い込み、心臓が裏拍を打つ。手足が小刻みに震え、視界がポリゴンショックを起こし、体中が燃えるように熱い。
「上は?」
ポンパドーデスはベッドの上段に目を向けて言う。ピンチ。そこには恐竜が居る。覗き込まれたら……!
「上は七海さん。うちらのリーダー。今体調悪くて寝てるからそっとしといてあげて」
それを聞くなり、ポンパドーデスはポンと両手を合わせ、わかったというジェスチャーをした。
「あー、小豆沢七海! 落ちこぼれの大統領!! みそっかすを集めてマグレで勝ち残ってイキってるって、茂が言ってたわ。校外学習で余程酷い目に遭ったのね。いい気味~!」
それでうちはキレた。壁にくっ付いた体を無理矢理引き剥がす。べりっと音がして、壁紙が剥がれた。ポンパの魔法の束縛を力ずくで打ち破った。
「ブレイクアップ!!」
コボレイエローに変身。
「ポンパドーデス、死ね~~!!」
うちは電力を最大限まで溜めると、相手に両手を向け、魔法を放とうとする。ポンパドーデスも交戦の構えを見せた。でも乱入者があった。ポンパの背後のベッド、上段の布団が持ち上がって、中から、緑の巨体が現れた。
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