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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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331 :げらっち
2024/07/15(月) 16:30:51
《楓》
あたしはさっちゃんに志願して、メカノ助のコクピットに乗せてもらった。
途端に後悔しそうになった。
豚の頭部に位置するコクピットは機械だらけで、何が何だかわからない。さっちゃんはこれを電気魔法で操っているのだろうが、あたしが使えるのは水魔法、こんな所で発動したら大変なことになる。さっちゃんのサイズに作られたであろうシートはあたしには若干だが狭い。
スクリーンからは双頭龍の姿が見えた。改造された恐竜は、噛み付いてきた。メカノ助は突っ張りでそれを弾き返した。龍は大きく後退し、木々をなぎ倒した。
「ミドリちゃん……今元に戻してあげるからね」
「……あれ? 今回のパイロットは楓ちゃんブヒ?」豚の声が響く。
「うん。悪かった?」
「悪くないブヒよ!」
とは言うものの、豚とさっちゃんはお似合いのカップルだ。搭乗者がさっちゃんじゃなくて豚は内心落ち込んだかもしれない。
しかもあたしは右も左もわからない。わかるのは脱出ボタンくらいだ。右上に「緊急脱出」と書かれた赤いボタンがあるので、すぐにわかった。
あたしは握り締めていた、ユーエツピーとかいう小さな硬い消しゴムみたいな物を見た。
えーと、さっちゃんはこれをどうしろと言ったっけ?
「これを左の……レバいすに刺す? レバーと椅子の間ってことか?」
あたしはレバーと椅子の間の至る所にユーエツピーを突き刺しまくった。しっくりくる場所が無い。突き刺した場所によっては、豚は「イタァ!」と叫んだりした。
「ま、まあこれは後ででいいや。よろしくね豚!」
「よろしく楓ちゃん。あ、シートベルトは締めたほうがいいブヒよ? 前に七海ちゃんがベルトを締めずに乗って、えらい目に遭ったブヒからね~」
そうなのか。あたしはシートベルトで体を座席に固定する。
「まずは土俵入りブヒ~!!」
メカノ助は四股を踏み始めた。ドスン、ドスン、揺れが起こる。
「そんなことしてる暇ないよ!!」
「相撲は伝統、作法が大事ブヒ。これをしなきゃ始まらないブヒよ。戦隊が戦闘の前に名乗るのとおんなじブヒ」
「いいから攻める!!」
あたしは手元のレバーを適当に引いた。
「ブヒ!?」
するとメカノ助は後退した。
「あぶなっ!! 俺らを潰す気か!」
足元で散り散りになって逃げる公一くんたちの姿が見えた。
「メンゴ!! 今度こそ突撃!」
あたしはレバーを前に倒す。メカノ助は龍にぶつかった。
「目を覚ましてミドリちゃん!」
「ブヒィ!」
頭に大きな張り手。だがもう一方の頭、凶悪な機械の頭が、メカノ助の腕に噛み付いた。
ガブ!!
「痛いブヒ~~!!」
『白旗を振るまで痛め付けてやるわ』
「メカノ助! 持ち上げて!!」
あたしはレバガチャ。電気魔法が使えないので明確な指示を与えることもできない。
「吊り落としブヒ~!!」
メカノ助は龍を掴む。相手も相当な重量だが、上空に高々と持ち上げる。力持ち。そして、地面に叩き付けた。土煙が起こり、スクリーンが黄色い砂埃で覆われた。
見えない。
あたしはワイパーのボタンを探した。
「これか!」
ウィーン。ワイパーが作動し、スクリーンを綺麗にした。視界がクリアになると、鋼鉄の歯を噛み合わせてこちらを威嚇する頭が見えた。ミドリちゃんの物ではないあの頭が厄介だ。
「とにかく攻める!!」
「ま、待ってブヒ。がむしゃらに攻めてもまた噛み付かれちゃうブヒ~!」
「弱虫毛虫なんだから!!」
とはいえ豚の言う通り、噛み付かれたら豚は負傷、コボレンジャーは敗北してしまうかも知れない。戦隊の運命が掛かっていると思うと、ぬるい汗が垂れた。メタルの頭はリーチが長く、近付けない。
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