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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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343 :げらっち
2024/07/22(月) 18:19:01
2044年8月11日、戦ー1決勝当日。
10時、コボレンジャーは金ぴかのゴールドスタジアムに会場入りしていた。
猛暑だが、曇天なので命拾い。雲がお日様の取り巻きをしていて本当に良かった。雲というブロッカーが無ければ、真夏の昼間の日光に晒されて、私は棄権を選んでいたかも知れない。
フィールドを囲う観客席には、全校生徒2000人が押し寄せている。席は一部2階建てになっており、上階は大きな窓がある室内の観戦席となっていた。ここは教師陣が陣取るつもりらしい。
控え室では皆そわそわとしていた。
「みんなよく眠れたブヒ? 僕は一睡もできなかったブヒ~!!」
「私はいっぱい寝れたよ。準備バッチリ」
会場にはちゃんと凶華も来ていた。私は犬に、親指と人差し指で◯を作ってOKと送った。
「七海」
いつみ先生が私の肩にポンと手を置いた。
「ついにこの日が来たね。校長先生に挨拶に行こうか」
「え、お越しになっているんですか?」
「当然だよ。さあ、コボレのみんなで行こうじゃないか♪」
いつみ先生の提案に対し、凶華だけはそっぽを向いた。
「オイラ行ーかね」
凶華以外の私たち5人は、いつみ先生に同行しエレベーターに乗り、上階の教員用観戦席に向かった。
到着。
空調が完備され、背もたれのあるゆったりとした座席が用意されており、十数人の先生たちが寛いでいる。
ガラス越しに、バトルフィールドが見下ろせる。
特等席だな。
私もこんなところで優雅に戦いを観覧してみたい。でもそういうわけにはいかない。私は見下ろされる側だ。そう考えると、リラックスしていた首元が、きゅっと絞められて、緊張感で息が苦しくなるように思えた。
「いやぁ~、楽しみですねぇ、今日の運動会は。白組も紅組も、全力を尽くして、悔いの無いようにやって下さいねぇ~……」
「あのですね村田先生。今日は運動会じゃなくて戦ー1です! 運動会は秋ですよ!! そう何度も間違えては、引退をお考えになった方がよろしいのではないですか!? シルバー人材雇用ももう限界ですよね!?」
フライドポテトを手に椅子に深くもたれる81の老人村田と、孫娘ほど年が離れた水掛先生が隣同士の席順になっているとは、何とも皮肉だ。
「和歌崎先生、夜勤明けの所お疲れ様っス!!」
緑谷先生は、和歌崎先生にペコペコ頭を下げていた。まるで赤べこ。緑だが。
和歌崎先生はくノ一であり、教師陣で唯一戦隊歴が無いらしい。長い黒髪を高い位置に括っていて、尖った顔、両目の下から顎に向けて赤い線が引かれている。
「そう言うならコーヒーくらいおごってよ」
「ハイ、コーヒー! コーヒーもコーヒー、目の覚めるブラックコーヒーですね! 緑谷筋二郎、この筋肉に賭けて、必ずや30秒以内にお持ちします!!」
緑谷先生は腕をブンブン振って走り去って行った。
「ぶ、不格好ブヒねえ……」
「おい豚、和歌崎先生何歳か知っとるか?」
公一と豚がコショコショ話している。
「わかんないブヒ。若くも見えるけど」
「カンカンジャーの先輩調べでは、なんと50! 忍者の夫に先立たれた寡婦らしい! 緑谷先生は年上好きだから、狙っとるっちゅうわけや」
ガッ!!!
足元に四方手裏剣が突き刺さり、公一と豚は顔面蒼白になり震え上がった。
和歌崎先生は座ったまま公一たちを睨み付けていた。
「江原公一、情報伝達は忍者の基本のきです。他人に傍受されぬよう細心の注意を払いなさいこの不注意者が!! だから赤点を取るのじゃといつも言っておろう!!」
あれから30秒経ったが、緑谷先生、帰ってこない。
「おっ、佐奈ちゃん! ここまで勝ち残るとはさすが私の見込んだ生徒だねえ!」
黄瀬先生は禿げ掛けており、オシャレに決めた蝶ネクタイも、首の肉に埋まってしまっている。デリカシー無く佐奈のソーシャルディスタンスに踏み込んだ。
「今日も小っちゃくてかわいいよお。ベストを尽くして……あわよくば、優勝してねえ……うひゃひゃ……」
黄瀬先生は尊いものを触るように、佐奈の頭を撫で回した。佐奈は流石に教師相手に暴言は吐かなかったが、その険しい目は「小っちゃくてかわいいって言うなそれに加えて脂ぎった手で触るな」と訴えていた。
「イラちゃん、ここまで来れて先生は感動だよ!」
桃山先生はピンクのハンカチで涙を拭いていた。身長は結構低く、楓と同じくらいしかないので、少女らしさを感じる。下ろした茶髪に、おニューと思われる桜の髪飾りを付けている。
「ボーナスステージだと思って楽しんで!!」
「はーい、あかり先生!」
2人はハイタッチした。
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