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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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366 :げらっち
2024/07/28(日) 11:25:45

 今日は新入生オリエンテーションだ。講堂のような教室、俺は一番後ろの席に着いていた。
 ぎっしりと着席している同級生共。
 俺の周りには、人は寄り付かなかった。俺の容姿がいかつく、近付き難いと思っているのだろう。俺は他人と関わるのが好きではないから好都合だ。
 生徒の中には、もうお仲間を作っている奴らも居るようだ。

 スポーツマンタイプの男子数人が、眼鏡を掛けた小柄な男子を囲って、手下扱いしている。
 垢抜けない女子2人が隣同士に座って、無理矢理話を合わせて、作り笑いの見せっこをしている。
 眼鏡を掛けたエリートかぶれの男子は、取り巻きにおだてられて、鼻の下を伸ばしている。

 車椅子の校長は、チームを組んで戦え、確かにそう言った。
 ああいう奴らがそれにあたるのだろうか。
 俺には馴染めない。本来ヒーローは1人で硬派に戦う物だ。男なら群がらず行動すべきだ。チームプレイなど足を引っ張り合って、慣れ合って、レベルを下げ合うだけ。不要だ。チームなど、糞喰らえだ。
 戦隊学園といえど、俺は1人きりの戦士を目指すとするかな。


 チャイムが鳴り、5人の教師が教壇に上がった。

「あ、あー、ただいまマイクのウォーミング。これ聞こえてる!?」
 二十歳くらいの、まだ少女っぽさの抜けきらない女教師がマイクを握っていた。キーン、耳障りな音が響く。
「あっ失礼! えーと、赤の日に亡くなられた5人の先生方の跡を継いでこの学園の教師として赴任した、私は桃山あかり、生物クラス担当です! 私もみんなと同じ新入生だから! わからないところは教え合って行こ!」
 女は痩身の男教師にマイクを回す。
「俺は青竹了、化学クラス担当だ。次」
 マイクをバトンにしてリレー。
「黄瀬快三だ。機械クラスの担任を務める。興味ある子は是非、研究室の扉を叩いてくれ」
「私は緑谷筋二郎!! 武芸クラス担任だ!! 格闘クラス担任の座が欲しかったが、代田先生に負けてこの座に……くっ、いつかはこの筋肉をピッカピカに磨いて、リベンジするからな!! ピッカピカの1年生諸君も抱け大志を!!」

 最後にマイクを渡された教師は、一番目立っていた。
 何故なら赤。赤で覆われていたからだ。コイツは何者だ。俺の疑問に答えるかのようなタイミングで、赤は開口。

「赤坂いつみ、魔法クラスの担任さ♪ 僕たち5人そろって……」

 赤坂と名乗った教師は、指で小さく指揮をした。4人はそれを見て息を合わせ、そして、


「学園戦隊Gレンジャー!!!!!」


 赤をセンターに決めポーズを取った。
 これには満員御礼の教室も、白けた。
 青竹が「チッ、だからやりたくないと言ったのに……」とぼやいたのが丸聞こえ。
「ふふっ、みんなまだ温まってないようだねえ。そう緊張するな♪」
 赤坂は笑顔のフラッシュ。女子生徒たちから貴金属のような黄色い声。

 ……くだらん。
 たかが知れてるな。
 俺は頬杖を突いて天井を見上げた。

「それではオリエンテーションを始めよう。まずは9つのクラスについてだが――」


 その後の教師共の話は、マトモに聞いていなかった。

 すると突如。

 ジリリリリ!!!!

 ベルが鳴った。何事だ。

『緊急事態発生。緊急事態発生。学園内に怪人が侵入。西校舎に接近している模様。教職員戦隊、及び、覚悟のある学生戦隊は、臨戦態勢を取るように。非戦闘員はただちに指定の避難場所に退避せよ。繰り返す――』

 西校舎といえば、ここだ。

 入学して間もないのにハプニング。大丈夫なのかこの学園は。
 恐怖は伝言ゲーム。錯綜して大きくなって、それが真実であるように振舞う。生徒共はパニックに陥った。机の下に頭を突っ込んだり、抱き合って震えたり、我先にと先生に駆け寄ったりと滑稽だ。俺は自席を離れない。
 そんな中、ひときわ大きな声を出したのは赤坂。

「これはちょうどいい! かわいい新入生のみんなに、Gレンジャーの実力を見せてあげるチャンスじゃないか♪」

「それは危険でデンジャラス! 生徒の命が最優先だろ?」と緑谷。ごつい割に保守的だ。
「いやいやいつみの言う通りかもねえ。ここはGレンジャーのお披露目会といこうよ……ひゃひゃひゃ……」黄瀬はフサフサの髪を掻き分けた。

「みんな、僕について来い!!」

 赤坂に鼓舞されたか、過半数の生徒はGレンジャーの後を追って校庭に出て行った。
 さあ俺はどうするか。ちら、窓の外を見る。

「…………」

 ふん。興味が無い。
 外の光りも、あの教師も。輝きなんて、糞喰らえだ。

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