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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗368

368 :げらっち
2024/07/28(日) 11:26:24

 笑った。

「ぎゃっははははははは!!! 見ろよみんな、これぞ失敗作だ! お前は変身してもしなくても、真っ白なんだよ!!」

 クールな黒に憧れた。だが皮肉にも、俺の変身は真っ白だった。この学園にも戦隊界にも、白の戦士は殆ど存在しないらしい。
 変身だけではない。俺の体そのものが、真っ白だ。
 白に白を重ね塗る。これには天堂茂の集団のみならず、廊下に居た全生徒共が笑い転げた。

「お前の変身は前に授業で見たことがあるぞ。お前は弱い弱い失敗作、口先だけの男なんだよ!!」

「黙れ!!」
 俺は天堂茂の胸ぐらを掴もうとした、が、その前に。
「ブレイクアップ!!」
 天堂茂と不快な仲間たちは、変身した。全員が赤の戦士に成った。無色で独りの俺とは真反対の、有色の5人。

「赤春戦隊エリートファイブ!!!!!」

 奴らを中心に、炎が噴き上がる。生徒たちは逃げていく。
 熱い。そして、眩しい!
「っ!!」
 俺は飛び退いた。廊下の向こう側まで。
「……どうした? 大口を叩いておいて今更逃げるわけじゃないだろうな? 僕らは全員が赤の戦士。対するお前は真っ白だ。そもそもお前は戦隊にすらなれていない。戦士としての名前さえ持たない、ただの余り者なんだよ!!」
「ぎゃはは!!」

 調子に乗るな、俺の強さを知れ!

「スパイラルスノウ!!」
 俺は螺旋状の吹雪を奴らに投げ付けた。
「ストレートファイア」
 5人は炎を一直線に俺に差し向けた。炎光が雪を砕き、俺を襲う。どうすれば!
「くう!」
 俺は攻撃をもろに受け、窓ガラスを突き破り、校庭に転がった。
 1階だったので落下による負傷は無かったが、それ以上に俺の恐れる物が、そこにはあった。

「光りが……!」

 屋外。真昼の炎天下。変身を貫通し、強い日光が俺の肌に目に突き刺さる。
 全身が火だるまになったかのように痛む。俺の目は真っ白に霞み何も見えない。
「あああ!!」
 俺は地面に突っ伏す。声だけが聞こえる。
「飛び火ポート」
 爆音。天堂茂がすぐ近くに移動してきたのがわかった。
 見えない。だが負けられない。
 俺は氷塊を生み出し、声のする方に、投げ付ける。
「喰らえ!!」
「火球カースト」
 炎が落っこちてきた。
「あああああああああ!!!!!」
 俺は頭から炎を被り、校庭に押し付けられた。
 ただでさえ光熱には弱いというのに。熱い。熱い。熱い!!
 その感覚は一定を越えた所で麻痺し、それより恐ろしい物にとってかわられた。
 寒い。冷たい。
 俺は火にまみれ、諦めたかのように、膝を抱きかかえた。熱くてたまらないのに、全身が冷たく、冷水の中にいるかのように震えている。

 助けてくれ。やめてくれ。

 灼熱は、自分を騙し続けていた嘘さえも溶かしてしまった。

 俺は、強者なんかじゃない。

 弱くて弱くて、たまらない。

 泣き虫で、怖がりで、独りぼっちな、

 弱者なんだ!!


 目は白み、僅かに残った聴覚が、けなげに周りの音をキャッチしていた。
「茂さん、やり過ぎですよ! 死んじゃ――」
「構うもんか、父上に頼めばこのくらい事故として処理できる。それに――邪魔者は早めに消しておかねば。僕が――残るために」

 そこに。

「やめなさい!!!」

 一筋の、光り。

 目は見えていない。ではこの光源は何だ?

 俺の、哀れな、暗闇の人生に、射し込む光りのような、声。

「げ! ――レッド! この僕に逆らうのか!?」
「炎魔法スバル!!」
「ぎゃあああああああ!!!!!」
 なんということか。天堂茂たちは一瞬にして撃退されたようだった。
「ブルー! 消化して!」
 冷水と、安息が、俺を包んだ。

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