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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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381 :げらっち
2024/08/01(木) 14:22:34

第35話 戦隊の証


 はあ、はあ、はあ

 何だ、今のは!?

 現在現時点に戻された。校長室前の廊下、私は床に突っ伏していた。
 鮮烈で強烈な映像を見た。何年もの時間に思えるが一瞬の出来事だった。私はブラックアローンの記憶を追体験した。突如自分が彼になり、彼目線で、闇に包まれる迄の人生を見た。私が闇に包まれた、このタイミングで。

「七海」

「ひぃ!?」
 私は跳ね起きた。校長室の扉を開け、いつみ先生が出てきた。
 心臓が早送りされる。本能的な逃避。後ろに手を突き、後ずさる。いつみ先生がしゃがみこんで、私の顔を覗き込んだ。赤い眼が、獰猛に光っていた。

「僕の話を聞いていたのかい?」
 先生は笑っている。有邪気な笑み。

 怖い。

 私が殺した怪人は楓のお父さんだった。それを知った直後に私を襲った、ブラックアローンの負の思い出。
 そして信用していた先生からの、尋問の様な言葉。怖くて怖くて、答えられなかった。
「おい」
 パン!
 衝撃が走り、私の顔は右に傾げた。すぐさま痛みが追いついてきた。
 私をはたいた先生は、ニコニコとしていた。
「答えろよ。僕の話を、聞いていたのかい?」
 怖い。でもこのまま口ごもっていれば身が危ない。危機を感じ、口が自ずと答える。
「はい」
「ふうん。盗み聞きはいけないことだ。そうだろう?」
「だ、だって」
 パンと再び。先生は今度はバックハンドで殴った。私の顔は左に傾げた。
「だってじゃない。いけないことだよな?」
 私は右頬を庇い、先生を見た。にこやかな先生の顔が、潤んで見えた。涙のせいで。
「も、もうやめて」


「赤坂先生! 何かありましたか?」

 た、助かった。
 校長先生の声だ。
 自力では動けない校長は、部屋の中から大きな声を出して、こちらの状況を確認してきた。
「何でも無いよ♪ ちょっとした生徒指導だ」
 いつみ先生は歌うように答えた。
 そして私の目を見て言った。

「行け」

 その顔は笑ってはいなかった。冷たく無表情だった。赤い眼がレーザーのように私を貫いた。希望だった教師が、今は悪魔に思えた。
 私は逃げるように、というより逃げてエレベーターに乗った。
 急いで1階のボタンを押し、早く閉まれと祈った。こんな時に限って扉はのろのろと閉まるのだった。
 エレベーターが降下する最中、私は1階のボタンだけを見つめて呆然としていた。1階、1階、1階と読経のように呟いて。考えなくてはいけないことが多すぎて、考えるのを放棄してしまったのかのように。

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