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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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384 :げらっち
2024/08/01(木) 14:24:07

 翌日。
 8月13日、土曜日。
 午後3時から、コボレンジャーを退学にするか否か審議する、「評議会」が行われる。

 私と公一は会議室に向かっていた。

 呼ばれたのはリーダーである私だけだったが、公一は見送りする、と言ってついてきた。別に頼んでないのに。
「絶対負けるなよ七海! 無実を証明してくれ! 退学なんていややからな!!」
「うん」
 私は空返事する。

 しんと静まり返った廊下の、一番先にある扉。

 静かにノックする。

「入れ」

 扉を開けた瞬間、無数の目が私に向けられた。

 冷房が効いて、涼しい、むしろ寒いというような部屋。コの字に長机が並べられ、教師陣、校長先生とヘルパー、天堂茂、そして大柄な男が、それぞれ着席していた。
 あの男には見覚えがある。銀縁の眼鏡、整えられた髪、しゃくれた顎。日本国旗をマントとして羽織り、嫌に目立っている。その男は大きな動きで腕時計を見、言った。

「遅刻だぞ。自分の立場をわかっているのか」

 公一が背後で呻いた。
「戦隊界のVIP天堂任三郎! これはもう退学で決まりやー!!」

 青竹先生が立ち上がり、公一を閉め出そうとした。すると校長先生が言った。
「入らせてあげなさい」
 天堂任三郎が苦言を呈する。
「しかし校長、私が呼んだのはリーダーである生徒だけだが?」
「友達を気遣うのは当然のことです。そうでしょう、任三郎さん? ここまできて帰って貰うのは失礼です。入れてあげなさい」

 天堂任三郎が言い返すよりも先に、青竹先生が「かしこまりました」と言って公一を中に入れ、扉を閉めた。
 天堂親子がそろって舌打ちしたように聞こえた。

「小豆沢七海、席に着け」

 私は指示に従い、簡素なパイプ椅子に座った。
 青竹先生が椅子をもう一脚用意し、私の斜め後ろに置いた。公一はそこに座った。

 全員の目が私に注がれている。その中にいつみ先生の赤い眼は無い。
 天堂任三郎は中央の椅子に、大胆に足を組んで掛けている。向かって右には息子の天堂茂。左には車椅子に座った校長先生の姿。
 校長先生は確か69歳。天堂任三郎は50代くらいに見えるが、年下の方が偉いのだろうか。

 本来なら緊張すべき場面なのだろうが、私は何も感じなかった。退学になるのはむしろ好都合だから。

 桃山先生がアナウンスを入れる。
「それでは、評議会を始めます」

 天堂任三郎はせかせかと喋った。
「簡単に済ませよう。小豆沢七海、君の率いるコボレンジャーは、教師に加担されていた。相違ないか?」

 ガタッと大きな音がした。背後で公一が立ち上がった音だ。
「されてへん!! 何か勝手に入ろうとしてきただけや! ぼくたちは頼んでないし協力もされてへん! ほんまに無罪や!!」

「お前に発言権は無い」
 と天堂任三郎。
「小豆沢七海、相違ないか?」

 公一は喚くのを諦め、私に「違うって言え、違うって言え……」と訴えてきた。
 でも私は、
「はい」
 と言った。
「はあ!? なんでやねん!! お前コボレンジャーを裏切る気か!!」
 後ろから肩を掴まれる。
「江原公一、座れ」
 青竹先生が公一を取り押さえ、座らせた。

「江原家では一体どういう躾をされたんだ? 有名忍者・江原忍一の息子ともあろう者が品性を疑いますね、父上!」
 天堂茂が父親の隣でクスクス笑った。

「教師の加担を認めたな。ではそのことに関しては不正行為だと認め、いかなる処分を受けても不服としないと解してよいか」

「頼むから否定しろ! 否定しろ!」と、後ろから公一が願を掛けてくるが。

「はい」

「七海!!!」

 私は否定する気など無かった。
 何なら、早く退学にしてほしかった。

「では多数決を取る。コボレンジャーの生徒6名を、退学処分にするかどうか」

 天堂茂は、我慢できないというように笑っていた。

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