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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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385 :げらっち
2024/08/01(木) 14:24:26

 桃山先生が端的にアナウンスする。
「賛成意見の人は、挙手願います」

 天堂任三郎は、真っ直ぐ力強く、拳を上げた。
 天堂茂はニヤつきながら、素早く手を上げる。まるで、授業で問題の答えがわかって、早く指名して貰いたい生徒のように。
 しかし挙手したのはこの2人のみだった。
 天堂茂は不服そうに父の顔をチラチラ見ていた。まるで、悪い事をしたのに何故か叱られない弟を前にして、もどかしがる子供のように。

 天堂任三郎は手を下ろし、顔をしかめて、机をコツコツ叩いた。

「反対意見の人は、挙手願います」

 青竹先生、黄瀬先生、緑谷先生、桃山先生、他の全教師が、一斉に挙手。

 校長先生も、手を上げた。
 その手は衰えにより震えていたが、それでもはっきりとした意思を示していた。

 天堂任三郎は校長を睨み付けた。
 校長は目を逸らすどころか、それを見つめ返した。睨んではいないその眼には、「生徒を退学にはさせん」という、強い決意が燃えていた。

 流石は元アカリンジャー。戦隊の中の戦隊、レッドの中のレッドだ。
 私の意志さえも覆りそうになった。
 退学はせず、この人の仕切る学園に残りたいと、僅かにそう思ってしまった。

 いや、現実を見ろ七海。

 この学園は、怪人を殺す戦士を作る為の場所。校長はその工場のトップだ。
 私を苦しめる元凶は、こいつなんだ。
 私はズボンを強く握り締めた。


 早く退学にしてくれ。私にとどめを刺してくれ。
 これじゃあ生殺しじゃないか。


 その場に居た全員――恐らく投票権を持たないのであろうヘルパーは除く――が、いずれかに手を挙げた。
 結果は明白過ぎた。

 公一は背後で「よっしゃ、助かった。まじ感謝や」と言った。

 だが天堂任三郎は薄笑いを浮かべた。
「おや、私の意見を重んじてくれるのでしょうな? 言いたくは無いが、学園の運営資金のほとんどは、私が率いる戦隊連合の出資によるものだ」
 校長先生が天皇だとしたら、天堂任三郎はマッカーサー元帥のようだった。
 その傲慢さに室内はザワついた。

「任三郎さん、余り勝手なことを言わないで下さいよ?」

 校長先生が、語気を強めた。

「確かにお金も大切です。あなたの立場もあるでしょう。ですがここは学園です。学校です。生徒たちが主役であらねばならんのです! 生徒のことを第一に考える。そうすれば、あなたのような結論には至らない!!」

 校長先生はしゃがれ声でそう言い切った後、ゴホゴホと咳き込んだ。緑谷先生が「無理をなさらず……」と言った。

 こんなに感情的になる校長先生の姿は初めて見た。
 それでも自分の地位や歴戦の栄誉などを持ち出さず、一教師としての熱意に留めている所が、やはりこの人は尊敬に値すると感じてしまう。

 天堂任三郎はその言葉をまともに聞かず、顎をしゃくれさせ、高そうな腕時計をいじっていた。
「理事長である私の決定だ。退学案は、可決とする」

「なんやねんそれ!! 多数決の意味ないやん!!」
 公一が立ち上がる。今度は青竹先生も止めない。


 その時、扉が大きな音を立てて開いた。


「おやおやお揃いだねえ。遅れてすまない♪」

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