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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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392 :げらっち
2024/08/01(木) 14:26:37
さて、外に目を向けてみよう。
今まさに学園から退出しようとしている天堂任三郎の姿があった。
「またも失敗だ……早急に始末せねば……」
彼は何かをしきりにぼやきながら、正門をくぐった。
彼が学園の外に出るなり、重たい音を響かせ、大きな門はひとりでに閉じられた。
敷地の外には車列が並んでいた。天堂任三郎の部下、ニッポンジャーの隊員たちの車だ。
天堂任三郎は停められている車の1台に乗り込もうとした。
するとドアが開き、運転士を務めている隊員が出てきた。呆然と空を見上げている。
「どうした。車に戻れ」
部下は返事をしない。
「何をしている」
「あ、た、隊長、あれ」
天堂任三郎は部下の指さす先、大空を仰いだ。
彼のしゃくれた顎が開き、ポカンと、あほらしい表情になった。
「何だ、あれは――」
まるで空のようだった。
空とは違う。もう一枚の空が、曇天に貼り付いていた。限りなく雲に近い、白と灰色のグラデーションが掛かった、少し光沢のあるボディ。
大きな大きな円盤が、学園に覆い被さるように、浮いていた。
今や車に分乗していたニッポンジャーの全員が、立ち尽くして、空を見ていた。
「た、隊長、学園に異常です!」
「そんなことはわかっている……!」
隊員たちは先程閉まった門をこじ開けようとしている。学園の内部の人々を案じているようだ。
「扉が開きません!!」
「ニッポンジャーだ! ただちに開けろ!!」
「私がやる」
天堂任三郎は腕時計のダイヤルを捻り、変身ポーズを取った。
「大和魂、スタンダップ! 日の丸戦隊ニッポンジャー! ニッポンレッド!!」
彼は真っ赤な戦士に成った。
「人馬だ!」
部下のうち3人が、門の脇、比較的低くなっている壁に背の高い順に手を突き、人間階段を作った。
それでも壁はまだ高い。天堂任三郎は助走を付けると、部下の背を駆け上がり、彼らを踏み台に、更に上へと飛んだ。
「ガシっと!」
天堂任三郎は大きな手のひらで、壁のてっぺんを掴んだ。そのまま懸垂をするように、強引な腕力で、よじ登った。
彼は学園の敷地内に飛び降りようとした。だが。
「へぐう!!」
見えないバリアのようなものに吹き飛ばされ、宙を回転し、車の屋根に落っこちた。
車の屋根が凹み、窓ガラスが割れた。
「隊長!!」
天堂任三郎は頭から血を流していた。
「無事ですか。どうなさいますか?」
「た、退却する……」
「え?」
「あのUFOは素性が全く分からん。つまり私たちにまで危害を加えようとするかもしれないという事だ! まずは安全地帯に避難し、作戦を練るのが先だ! 祟らぬ神に触りなし、急いで遠くに逃げるんだ! ほら早く運転しろ!!」
天堂任三郎はことわざを間違えて言った後、大柄な体を、壊れていない車にねじ込んだ。
ニッポンジャーの隊員たちは、唖然としつつも彼の後に続いて乗り込み、車を発進させた。ニッポンジャーたちは学園から離れて行った。
つづく
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