スレ一覧
┗
380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
┗394
394 :げらっち
2024/08/08(木) 12:16:48
夕暮れ、寮に着いた。
逡巡していても意味が無い。兎に角持つべき物を持ってトンズラだ。
「教科書をまとめて……」
すると、レッドカーペットの上の、僕が座るべき革張りのソファに、誰かが足を組んで座っていた。
「く、黒子か!?」
僕はシャンデリアに届くくらい跳び上がった。
だがそこに居たのは見知った顔だった。
「よお坊ちゃん。そんなに慌ててどーしたの」
白衣を着たボサボサ頭の男がけらけらと笑っていた。化学クラス首席の新藤ヘテロだ。
僕は恐る恐る彼に近付く。
「へ、へテロか。他の首席共はどうした?」
「そりゃ愛想を尽かして出て行っちまったぜ。お前が父上に捨てられた時点でな」
「くっ、薄情者めら……」
誰も彼も父上の名前しか見ていない。僕がそれをひけらかしてきたのだから仕方無いが。
「黒子とか言ったな。どういうことだい?」
ヘテロ、コイツは掴めない男だが藁にも縋る思いで打ち明ける。
「父上の部下だ。僕を始末しに差し向けられるだろう」
「そりゃ物騒だな。お前と結託した俺様の命も危ないか?」
「他の生徒に手荒な真似はしないさ。僕と関わりを持った生徒の、僕に関する記憶だけは消されるだろうがな」
「ほー」
ヘテロは、右が青、左が赤の、オッドアイのゴーグル越しに僕を見た。
「お前さんとの思い出がそっくりそのまま消されちまうわけか」
「そうだ。そうして毎年葬られてきたんだ」
無駄話をしている暇は無い。僕は荷物を担いで寮を飛び出した。
ちょうど黒塗りのリムジンが到着した。
「タクシージャー、ちょうどいい所に来てくれた。僕を西門まで運べ!」
僕はいつものようにリムジンに乗り込もうとしたが、先客が居た。
黒子を付けた男たちが、4人ほど乗っていた。
運転席が開き、白髪交じりの頭に帽子を被った運転手、タクシージャーの車田が現れた。
「坊ちゃんはイエローカードが累積しています」
「ど、どういうことだ!!」
「申し訳ありませんがこれも仕事です。わたくしの送迎以外のもう1つの役目、それは坊ちゃんの監視でした。旦那様からの命令で坊ちゃんを殺します、はい」
車田は指で手早く指示を出した。銃を持った黒子たちが車を降りる。
「ぎゃああああああああああああ!!??」
あの温厚な車田がお目付け役だったとは!! 戦隊の世界は恐ろしい。
僕は寮に逆戻りした。ヘテロにどんっとぶつかった。
「よおおかえり」
「ただいまー。じゃない!! 殺される、助けて!!」
僕はヘテロの胸ぐらを掴んでガクガク揺らした。ヘテロは揺られながら言った。
「非常用の地下への抜け道があるぜ。それだけじゃない、地下ガレージにはアレが用意されてるぜ」
「アレが完成したのか!?」
僕は更に激しくヘテロを揺らした。
「ああ。ポンパドーデスが意地になって完成させた。すごいぞありゃ! 逆転ホームランも夢じゃないぜ」
よし、アレがあれば、コボレンジャーを、父上を、見返してやれるぞ!!!
[
返信][
編集]
[
管理事務所]