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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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395 :げらっち
2024/08/08(木) 12:17:03

《七海》


 夕暮れ。
 評議会を無事に終えたコボレンジャーは全員集合し、校庭で立ち話していた。

「一時はどうなるかと思ったけど、楓のお陰で退学せず済んだわ! GJや!」

 6人の影が東に長く伸びている。
 今までは6だった。だが今は、5と1に思える。罪悪を背負った私は、彼らと関わってはいけない。黄金期は過ぎてしまった。次に来るのは、暗黒期か――

「七海ちゃんのお陰だよ! ねっ七海ちゃん」

 楓が私の背中を強く叩いた。私はゲホッと咳き込んだ。
 やだ。さわらないで。あなたに私の穢れをうつしたくない。
 楓は、どうしたの、という目で私を見てきた。

「私は戦隊証を没収された。それに――」

 それに、もうあなたたちとは居られない。

「まあまあ! 今夜は七海ちゃんの好きなカレーパーティーだよ!!」
「やったブヒ~!!」
 お祭り騒ぎ。
「あれ? あそこに居るのは……」
 その時、佐奈が何かに気付いたようだ。

 校庭脇の木陰から、天堂茂がこっちを伺っていた。
 私に負けた哀れな男は、何を思っているのだろうか。彼は突然叫んだ。

「見るなあああああ!!!」

 凶華が「よっゲロ!」と言うか言わないかで、天堂茂は情けなく逃げ出した。
「なんだアイツ、腐乱臭を撒き散らして!」
「でも様子が変だったブヒね」
「きもいですねきっとまたうちらに嫌味を言おうとしてたんですよ生きる価値無いですよあの猿」
「アイツ、友達が居なくて寂しいんじゃね!?」
「せやな!!」
 5人は明るく笑っていた。

 だが私の心は暗かった。
 天堂茂もまた孤独な存在だ。仲間も居なければ、あんなに自慢げに話していた父親にも見放された。
 あいつのことは大嫌いだ。だけど今だけは、ちょびっとだけ親近感を覚えた。
 私も孤独だ。仲間は居るけど、最早遠くの虹に見える。怪人と化した楓の父親を殺したような、罪悪の私は、あの虹には近付けない。

「てかもうすぐ夏休みやな!!」
「だね! 9月まで休みだし、みんなでどこか行こー?」
「よし、旅行のプランを考えようぜ!!」

 日が落ちてもまだ5人は立ち話を続けていた。
 私は一言も発さずにぼーっとそれを見ていた。

「で、その時さっちゃんったら……」
「こら豚!! その先を話すとソーセージに加工しますよわかってますね!?」

 皆、おしゃべりに夢中で気付いていないようだが。
 何か、重い物が地を這うような、不気味な音が轟いていた。
 何だろうこれは。私の心に迫る暗い影か?
 そんな不確かな物では無かった。皆も異変に気付き、周りを見渡していた。
「何やこの不快な音は。どっから鳴ってるん?」
「巨大な物が、迫ってる……っ!」
 佐奈はグラウンドに屈み込んで耳を付けた。そして、ぴょこっと跳び上がった。
「あっち!!」

 皆その方向を見た。


 校舎の向こうから、ぬっと、超巨大な天堂茂の顔が現れた。

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