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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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401 :げらっち
2024/08/08(木) 12:20:50
第37話 真っ赤なウソ
私は戦隊証を没収され、停学の身となった。
いっそのこと、退学にしてほしかった。
学園と縁を切ることはできない。かといって気持ちを切り替えて戦隊を続ける気にもなれない。
私の心は宙ぶらりんになった。
電気は点けたまま、二段ベッドの上段に寝転び、白い天井を見上げて、考える。
金閣寺躁子の言っていた、大人になる、とはどういう事だろう。
時間が経てば解決するってことだろうか。まだまだガキの私にはよくわからない。
いつか私も金閣寺のように、くだらんギャグに笑っているだけのような、悩みの無い人間になれるだろうか。なれたら楽、だろうな。
コボレのみんなは、退学を免れた記念に、部室でカレーパーティーをしているらしかった。
私は気分が悪いと言って参加を断った。本当に気分が悪い。
Gフォンを見ると、もう23時。そろそろ寝ようか。寝る気も起きないが。
意味も無く溜息をつくと、ドアが開く音。
「たっだいまー!」
マズい。楓が帰ってきた。私は布団を首まで引っ張り上げ、目を瞑り、寝たふりする。
楓が梯子を上がってきた。
「七海ちゃん、狸寝入りってバレてるよー! 電気点けたまま寝るあほが、何処に居る!!」
私は観念して目を開ける。
彼女の顔が覗き込んでいた。
「ごめん、眠いから、静かにして」
私は必死に目を逸らす。あの澄み切った目で見つめられたら、私の罪悪のタガが、また外れてしまう。
「いいから起きる!」
楓がまくしたてたので、私はベッド上で起き上がった。楓は梯子に掴まった状態で身を乗り出している。
楓はあろうことか、カレーの皿を突き出してきた。さっきからスパイシーな匂いがしたのはこのせいか。いくら嗅覚を刺激されても、虚無で満たされている私のお腹は、ぐうとも鳴らないけれど。
「ほら! 七海ちゃんの分のカレー持って来たから、食べて元気出して! 激辛でしかも大盛りだよ! ほい!」
食べたくない。見るのも嫌だ。
目を背け続けると、楓も不穏になってきた。
「ねえ無視すんなよ!」
食糧もそうだが、あなたの優しさなんて、いらない。
私には受け取る権利が無い。
「いらない!」
軽く振り払ったつもりが、楓はバランスを崩し、梯子から落ちて行った。
「うわあ!」
「楓!!」
ドタッ、ガシャーン、バリバリと凄い音。ベッドの下を見ると、ひっくり返った楓と、割れた皿、床に散らばったカレーが目に入った。
「楓、大丈夫!?」
私は急いで梯子を下りると、楓を抱え起こす。
楓は頭から血を流していた。
「な、何とか大丈夫……あたしの水魔法で、洗い流すから……」
「それより私の氷魔法で冷やす!!」
私は変身さえも省略し、手からありったけの魔法を出し、流血する楓の側頭部を冷やした。
「ありがとう七海ちゃん」
「ごめんね」
楓は流しで付着した血を流した。私は何度も、ごめん、ごめん、と繰り返した。
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