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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗404

404 :げらっち
2024/08/08(木) 12:22:07

「……それで私の何が解決するの?」
 私は冷徹な視線を彼に向けた。すると彼はニヤリと笑った。
「そうそう! そういう尖った所が好きやねん。でもめそめそした七海は嫌いやな。1人で溜め込まず、俺にだけでも話してくれへんか? お前が自分を好きになる手助けができるかもしれへん」

「……」

 そうだな。これ以上1人で溜め込むと限界を迎えてしまう。
 ここに来たのも、彼にそれを聞いて欲しいと、心の底で思っていたからだ。

「校外学習の時、私が怪人を殺したのは知ってるよね?」

「ああ知っとる。俺の愛刀コウガをよくもまあズタボロにしてくれたもんや。でもコウガをなまくらにした罪悪感で塞ぎ込んでるわけじゃないんやろ?」

「勿論違うね。で、その怪人なんだけど。怪人っていうのは、赤の日に赤で塗られた人間のうち、死ななかった人たちの、成れの果てらしいんだ」

 私は衝撃の事実を告げたつもりだった。
 だが公一は、さも当然の事というように言った。

「知ってるよ」

「ええ!!?」

 公一はまた笑った。
「忍者の世界は厳しいもんや。ていうか大体みんな知ってるんやないかなあ? 七海、お前が世間知らず過ぎるんやで」
 目から鱗のみならず魚自体が飛び出しそうだ。
「元人間である怪人を殺しちゃったから落ち込んどるん?」
「ち、違う。それだけじゃない」


 私は深呼吸して、意を決す。

「その後いつみ先生が話してるのを聞いたんだけど、その怪人は――楓の父親だったんだ」


 それには流石の公一も、「まじか」と驚きの声を上げ、ポカンと口を開けた。
「凄い偶然もあるもんやな」
「偶然なんかじゃない! あの怪人は楓の姿を見つけて、会いたくてついてきていたんだ。それなのに私は、ころしちゃった、あんなに酷い殺し方を、ころした、やだ、やだああああああ!!!!」
 私は頭を抱えて恐怖から逃げたくなって立ち上がろうとした。だが公一が、私を、ギュッと抱き締めてくれた。私は彼の胸で大声で泣いた。
「もう楓に会わす顔無いよ! 誰かの大切だった怪人を殺すなんてできないよ!! コボレのみんなにして欲しくないよ! もうやだよー、コボレも戦隊学園も辞めたい!! コボレンジャーなんて、組まなきゃよかったよ!!」

「……そんなこと言うもんじゃあらへん。それは本意じゃないんやろ」

 公一はハスキーな声で話す。彼の息遣いが、言葉と共に、私の頭に掛かる。

「それじゃ俺はお前と出会えなかった。楓もお前と出会えなかった。みんなみんな出会えなかった。その方がよっぽどアンハッピーや。お前は1人で抱え込みすぎなんや。みんなで戦って、勝っても、負けても、一緒に前に進む、それが戦隊や」

 そう言って私のことを強く抱き締めてくれた。

「友達を失いたくないよ」

 公一は単純な返答をした。

「じゃあ明日、楓に謝ったらいいやん」

「……どんなふうに?」
「草稿まで書かなあかんのか? ほんまにおこちゃまやなー七海は。男らしく決めればいいねん!」
「私女だけど」
「男でも女でも同じや」
「うわ、暴論だ」
「自分がしたことを隠さず話して、悪いと思ったところは謝るんや! プラス、これからも仲良くしたいってことを伝えれば良いんや!! 簡単な話やろ?」
「確かに、そう聞くと、簡単だな」
 私は彼の胸から顔を離して、彼と見つめ合った。私は目を真っ赤に泣き腫らしていただろう。公一は三度笑った。
「簡単やろ?」
「まあ、言うのと実際にやるのとは大違いなのだけど」

 公一は仏頂面を作った。またキスはお預けになった。


 私は目を瞑り、心で謝意を述べた。
 ごめんなさい、楓。
 カラフルになりたいって願ったのも、友達が欲しかっただけなんだ。
 もう一度友達になりたい。

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