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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗407

407 :げらっち
2024/08/08(木) 12:23:20

 目的地に近付くにつれ、物々しい雰囲気になっていった。
 今にも雨を降らしそうな空気。
 夏とは思えぬような冷たい風が、木々を揺らした。

「はあ、はあ」

 男子寮から少し離れた所にある女子寮に着いた。多くの女子生徒たちは男子と同じく、建物から出て、上空の不審物を見上げていた。
「何あれやっば!!」
「バエる~!!」
「もしもし聡くん? 愛理だよ! なんか大変なことが起きてるみたい! 地球最後の日!? もしかしたらもうお別れになっちゃうかも!! 今までありがとっ、大好きだよ! チュ!」

 この中に楓は居るだろうか? 私は目を凝らし共感覚を凝らしあの青を探した。
 見出せない。

「どいて!!」
 私は群衆を掻き分ける。
「わあ、白玉あんこちゃん!」
「白がうつるわ!!」
「何言ってんの、白玉あんこ様は今や学園一の人気者なのよ!!」
「キャー白玉ぜんざい様サインを!!」
「コボレンジャーが世界を救ってくれるの?」

 くだらないミーハー共を藪漕ぎし、寮の入口へ。
 楓はお寝坊して部屋でまだ寝ているのかもしれない。階段を駆け上がり、5階の自室に突っ込んだ。

 鍵は開いていた。

「楓!!!」

 楓の姿は無かった。
 夏なのに寒い部屋。洗面所にもトイレにもお風呂にも居ない。
 勿論、ベッドにも居ない。楓の使う下段を調べたが、布団は乱雑にめくられておりぬくもりは無かった。随分前にここを離れたらしい。どこに行ったのだろう? 争った形跡も不自然な点も無い。
「――いや」
 不自然な点はあった。

 カーペットのカレーの染みから、足跡が続いていた。楓はこれを踏ん付けて、何処かに行ったのだ。それを目で追って、危うく気を失いそうになった。
 足跡は窓の手前で止まっていた。窓は開いていて、風が吹き込んでいる。
 立ち眩みがして、ベッドの枠に掴まった。まさか楓は、私に絶交されたのを苦に、飛び降りたんじゃ。
 まさかとは思いつつ、恐る恐る窓に歩み寄り、5階から真下を見た。ただ外で騒いでいる群衆が見えるだけだった。ホッと温かい息を吐き出す。どうやら自殺などという最悪の結末は無かったようだ。流石にそれは考え過ぎだったか。
 だが足跡はここで途絶えている。窓からどこに行ったのか。下に落ちる以外、行き先と言えば、天しか無いが。

 私は円盤に占領された空を見上げ、次に群衆を見下ろした。
 絶対楓はどこかに居る。探せ、探すんだ――
 私は目を凝らして数百名にも及ぶ生徒たちを見渡した。楓の見た目は平凡だが、楓のイロは、そうそう見れない澄んだ青だ。きっと見つかる――

 見つからない。だめだ。
 ポロッ。2階から目薬、ならぬ、5階から涙が落ちた。こんな時に何を考えてるんだろう私は。


「共感覚なんて、肝心な時に、何の役にも立たない―――――」


 私は失意の中階段を降り、寮を出た。
 すると、青ではなく大好きな黄を見つけた。私はその方向に猛進した。
「佐奈!!」
 佐奈も私に気付いたようで、ドクターイエローのように高速で私の懐に突っ込んだ。
「七海さん! この人混みの中埋もれてるうちを見つけてくれたんですね……!」
 仲間に会えて嬉しい。私は彼女を抱き締めた。
「楓を見なかった?」
 佐奈は途端に不機嫌な顔になり私と距離を取った。
「何だ楓さんを探してたのか。知りませんようち夜はちょっと出歩いてて寮に帰ったらこの人だかりで驚いて何だろうと思ってお空見上げたらあらビックリ! ユーフォーが!! ってわけです。非科学的なことは何もわからぬ」

 長文の中に気になる点があった。

「出歩いてた?」
「うん……こいつと」

「ブヒィ! 七海ちゃん!!」

 ドクターイエローに続き、貨物列車モモタローの登場だ。
 私は脂肪の塊によって持ち上げられ、盛大にハグされた。暑苦しい。
「やめ! 豚ノ助!!」
「やめないブヒ~! さっちゃんとだけ抱き合ってずるい!! ブピブピ」
「七海さんに何しやがる」と佐奈。
「俺も居るで」
 私の後を追ってきていた公一も合流した。
「あら公一くん。本当に影薄いですね……」

 佐奈は「いい加減下ろせ!!」と、豚の尻を蹴ったので、私はようやく解放された。
「ていうか2人、夜にこっそり会ってたの?」

「ちが!」
「イェスブヒ」

 回答が別れた。まあ後者が事実だろう。
 かつて夜の学園を歩いた時、外でイチャラブカップルを見かけたのを思い出す。佐奈と豚があれになろうとは……

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