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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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415 :げらっち
2024/08/10(土) 12:30:26

「訃報といえど、お前にとっちゃ朗報じゃねえか。あの坊ちゃん、お前のことを目の敵にしてたからな」
 ヘテロはひゃはは、笑った。

「笑うな!!」

 諦めない。

 絶対、友達を助けるんだ。

「どうするつもりだ? 9回裏、ツーアウトだぞ?」
「1打席ありゃ十分だ。エリートキングを使う」
 体を起こすと、エリートキングの底部に頭をぶつけそうになった。手探りし、メンテナンス用と思われる入り口を見つけた。
「無駄だぜ、エリートキングはお前んとこのメカに負けてぶっ壊れてる」
「打席に立つ前に諦める馬鹿が居るか。何とかするよ」

 狭い上向きの通路、金属製の梯子を掴んで登っていく。
 カン、カン、カン、何メートル上がっただろうか。
 ロボの心臓部に辿り着いた。そこが心臓部だということは一目でわかった。何故なら。

「ポンパドーデス!?」

 配線だらけの壁に、腕と足が機械に埋没した女性の姿があった。ぐったりとうなだれており、横に流れるような茶髪は乱れている。
 機械クラス首席であり学園のロボ市場を独走するロボ作りの天才、ポンパドーデスの変わり果てた姿がそこにあった。

「ついにロボと一体化しちゃったの? しっかりしてよ」

 私は彼女の肩を掴んで機械から引き剥がそうとしたが、冬のドアノブの静電気を10倍にしたような痛みが走り、手を引っ込めた。指が赤くなっていた。

 ポンパドーデスは何かブツブツ呟いていた。
「茂……茂……」
「もしもし?」
「茂……茂に捨てられちゃった……どうしよう……私のしてきたことは……」

 大嫌いな女だったが、みぞおちを抉られるような、沈痛な気分になった。
 傲慢な者同士が損得で付き合っているだけだと思っていたが、この女は本当に天堂茂を愛していたというのか。
 そしてその天堂茂に捨てられた。彼が死んだことを、彼女はもう知っているのだろうか。
 この女も私と同じ、仲間を失った、みじめな存在だ。

「ポンパドーデス、あなた、名前は?」

 ポンパドーデスは顔を上げた。面長の顔はやつれて目が死んでいる。
「茂……茂……」
「それはあなたの名前じゃないでしょ? 自分の名前を答えてよ」
 ポンパドーデスとは髪型のことで、コイツの名前は別にあるはずだ。確か。

「負けてちゃいられない、一緒に戦おう。天堂茂にも届くかもしれない」

 ポンパドーデスの目がちょっとだけ光った。
 彼女は、「メカコ」と言った。何のことだろう。彼女はもう一度「メカ子」と言った。名前か?

「いや、あだ名じゃなくて本名を……」

「本名よ! 本名が田中芽加子!!!」

 これなむ変な名前だ。苗字が普通オブ普通なので余計に変に思える。ポンパドーデスの方がよっぽどいい名前じゃないか。私はしばらくぶりに笑いそうになって、ニヤつきを隠すのに必死になった。
「笑うな!! 落ちこぼれ国の総理大臣小豆沢七海、あーたなんかがこの私の作ったエリートキングに踏み込むなんて29年早いのよ!!」
「あ、自惚れが戻って良かったね。でもこのロボのどこがエリートなの? 急ごしらえの間に合わせ、って露呈しているのだけど」
 私は壁をキックした。ロボ全体が大きく軋み、幾つかのパーツが剥がれ落ちた。欠陥品だ。
「イタッ!! 何すんの!」
「大方、天堂茂に急かされて作ったんでしょうけど」

「私、もうダメなの……双頭龍で出撃してあーたたちコボレンジャーに負けた時、腕を負傷して……前みたいに精緻なロボを作れないのよ。茂の期待に答えられないのよ! 私はロボを作らないと存在価値が無い。だから私自身が、ロボになった、ってワケ……」

「じゃあ天堂茂にわからせてあげようよ」
 今は、天堂茂が死んだらしいという事を、教えるべきではないな。
「メカノ助が私を探してる。もう一度エリートキングを動かして、メカノ助を倒して。あなたならできるよ、芽加子」

 芽加子はギリッと歯を鳴らした。
「あーたなんかに言われずともできるわよ!!」

「よしっ、じゃあ私は操縦席に行くからね」

 私は梯子を登る。

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