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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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417 :げらっち
2024/08/10(土) 12:31:05

 涙は氷の粒となり、魔法の結晶となり、メカノ助の頭に落っこちた。


 奇跡が起きた。メカノ助は寄り切りの手を緩めた。
 鋼鉄のマスクで覆われた豚の顔が、私を見上げた。コクピットの窓に、操縦している黄色い戦士の姿が見えた。

「七海さ~ん!!」と佐奈。
「七海ちゃん! これどういう状況ブヒ!?」と豚。

「さな!! ぶた!!」
 悲しい時よりも、友情に触れた時の方が涙が出た。温かい涙が。
「よかった……よかった……!」
 魔法も絆も、ちゃんと存在した。私は滂沱たる涙を腕で拭き、豚たちに向けて叫ぶ。

「どういう状況でも、リーダーの命令をよく聞く事! エリートキングを持ち上げて!! 天のUFOに届くように!!」

「えー、このロボを持ち上げるブヒ!!?」
「きゃはッ! クレイジーじゃん七海さんウキウキしてきますね、ほら豚ァ!! 七海さんがやるっつってるんだからつべこべ言わずやるの!!」
「はいブヒィ!!」

 やっぱり仲間は有難い。

 豚は雄叫びを上げて、エリートキングを持ち上げた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
 ゆっくりと、エリートキングが浮き上がっていく。これほど巨大で重量のあるロボを持ち上げるとは相当の怪力だ。後で沢山お礼を言わなきゃな。
 私は操縦席の窓から外に出ると、外壁をよじ登り、エリートキングの頭のてっぺん、最も高い位置を目指す。
 メカノ助がエリートキングを持ち上げ、更に私がその頂点に立てば、上空のUFOにも手が届き、楓を助けに行ける。コボレらしい、クレイジーな作戦ではないか。

 冷たい風が吹き付ける。私は今相当高い場所を登攀している。下は決して見ないようにしよう。落ちたら、死ぬ――

「っ、うあ!」
 強風が吹き、私は宙に投げ出された。無慈悲な重力に引き寄せられる。空気をもがいて、必死にロボから飛び出している鉄パイプを掴んだ。
 握力の総てを使って、片手でぶら下がる。死んでも離すか。手に豆ができそうだがそんなことはいい。両手で鉄パイプを掴むと、体重を持ち上げ、何とかまた登り出した。

 ついにエリートキングの頭頂部に登頂した。
 滑りやすく掴まる部分が何も無い髑髏の上、四つん這いでバランスを取る。下を見ると、既にビル20階くらいの高さになっており激しく眩暈がした。豚は必死にエリートキングを持ち上げているが、筋力も限界なのか、グラグラと揺れている。

 上空を見ると、白銀の円盤が迫っている。
 私は手を天に突き出した。
「もうちょい……!」
 あと少しで届きそう。
 落ちるリスクも考慮せず、2本の足で立ち、爪先立ちで背伸びした。だが足りない。
「180……あれば……」

 あと数センチという所で。

 カッと、円盤が発光した。私は目を瞑った。
 光りが私を飲み込み、足がロボを離れた。浮遊感。私は円盤に吸い込まれた。

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