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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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418 :げらっち
2024/08/10(土) 12:31:54
「クレバーとは?」
問答か。私はありのままに答える。
「一時的な感情に左右されないこと」
「自由とは?」
「居場所があるということ」
「きみはクレバーで自由だね」
「まさか。真逆だよ。必死に抗ってる所だ」
私は、唯真っ白な空間に立っていた。
ここはUFOの内部か。それとも天国か。それとも単に私の目がぶっ壊れたか?
辺りを見渡す。広さも遠近感もよくわからないが、私を囲うように、背景に溶け込むように、7つの真っ白い台座があった。そしてそのうちの2つには、イロがあった。実体の無い、イロだけの存在。真っ赤なイロと、真っ青なイロが座って居る。その青を見た途端叫んだ。
「楓!!」
それはまさしく楓の青だった。私はよろよろとその青に向かった。
「楓、どうしてそんな姿に? あなたの肉体はどうしたの!?」
「伊良部楓は真の姿になったのさ」
青の隣、赤がそう言った。この赤にも見覚えがあった。
「赤坂いつみ、それはどういう意味?」
赤は私の傍に飛んできてヒトの形になった。真っ赤なポンチョに身を包んだ、真っ赤な人。
「そのままの意味さ♪ カラーは、イロは、人が生まれ持ったもの。入学式の日にきみがそう言ったろう。イロ、こそが人間の本質さ♪」
♪がいちいちうざったい。私は八分音符を無視して楓に、青に、話し掛ける。
「昨夜は、ごめん。嘘吐いて、隠し事して、拒絶して、ごめんなさい。もう一度友達になって、一緒に歩もう。もうこんな所から帰ろう楓」
だが一切の反応が無かった。
「楓を返してよ」
赤坂いつみにそう言うと、彼は私に指揮棒を向けてきた。
「だめだね。緑も黄も桃も紫も貰う。もちろん白(きみ)もだ。純粋な、イロだけの姿になり、きみたちは1つになるだろう」
「やだよ」
私は自分の手を見る。泥がこびり付いて乾燥しカピカピだし、爪は割れて血が凝固している。服はズタボロ、体中生傷だらけで痛い。公一に切られた頬の傷もヒリヒリ痛痒い。
でもこれは生きてるって証だ。
「イロだけの姿なんてお断り。そしたら友達と触れ合うこともできない。どんなにボロボロでも良いから、私は人間の姿で生きたいな」
赤坂いつみは、にま、と有邪気に笑う。かつてはこの笑みを見てどぎまぎしたが、今は軽蔑以外如何なる感情も湧きやしない。
「きみはニジストーンの力を理解していないから、そういう事が言えるんだ」
ニジストーン、とは?
「きみは神を信じるかい?」
神。
これまた飛躍したお話だ。
「神なんて居るとは思えないな。居るとしたら、何故世界はこんなにも馬鹿であほで、理不尽なの? もう少しましな創世を期待したかったな」
神に少しでも学があれば、私みたいな皮肉な存在は生まれなかっただろう。
アルビノで色彩を持たず、光りを真正面から見られないのに、他人のイロを見ることはできる。なんという悪意ある設定だろう、こんな体に誰がした。
神が絶対的な力で世界を統べているなら、障害も病気も戦争もいじめも、無いはずだ。
「相変わらず忌憚の無い物言いをするねぇきみは。神も畏敬や畏怖の対象ではないかい。まあ僕もそれには同意だよ。神、なんて権限はたかが知れている。神は世界の観察者であり、調律師だ。ちょっとした狂いを直す程度のことしかできない。世界を変えていくのは、世界に住む生命そのものさ」
赤坂いつみは四分休符の後に言う。
「ずっと掛かって居る虹。知っているかい?」
楓たちが話していた、温かい家庭で育った子供なら誰でも知っているだろうという童話だ。私はその「誰でも」の対象外だが。
「その御伽噺が何だっていうの?」
「御伽噺じゃないんだよねえ、これが」
赤坂いつみは指揮棒を滑らかに振った。
「昔昔、いや、そう遠い昔じゃない。赤の日の前まで――ある意味それは、気の遠くなるほど昔だが――ずっと空に掛かって居て、世界を見守っている、そんな虹が、ありました」
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