セブンネットショッピング

スレ一覧
380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗420

420 :げらっち
2024/08/10(土) 12:33:31

 長兄、つまり一番最初に自我を持ったイロは、白だった。私とは1000年以上の年の差があったはず。
 白はイロたちをまとめ、世界を見守る大きな存在だった。それはまるで、人間たちが信仰する、「神様」のよう。

 人間にはこの虹が見えてるのかな? いや、きっと見えてない。少なくとも大多数には。それでも人間は神という物を信じてる。見えない物感じられない物に縋ってる。信じてるってことは、疑ってるということ。本当は実在しないって、心の底では思ってるということ。
 そんな矛盾した人間が、いとおしく思えた。

「人間っていいな。迷いながら生きている。それって、道を自由に選べるということ。私には無い物だ。うらやましいな」

 白は私に言った。
「血迷ったことを言うでない。わしらがこっそりと進むべき道を正そうとも、彼らは何度も道を踏み外し、争いの歴史を続けてきた。お前もそれをずっと見てきたじゃろう?」

 私は言い返す。
「でもお兄さま。それ以上に、尊い愛の歴史も見てきた。人類が滅ばずに生き続けているのは、争いだけじゃない、愛する心も持っているから、じゃないのかな?」

「綺麗事を抜かすな!!」と憤慨する兄や姉を諫め、白はヤレヤレと言うのだった。


「人間っていいな。おいしいものを食べて、おしゃれして、遊んで、色んな人と関わって、喧嘩なんかもして、誰かを好きになったりして……」


 私は我慢できなくなって、人間の世界に、手を伸ばした。
 仲間に入ることはできなくとも、その憧れの一欠片だけでも触れられないかと、そう思った。


 気付くと私は、地上に居た。
「!?」
 見上げる空には、私以外の6色の虹が掛かって居る。

「ど、どうなってるの!?」
 必死に思考を後ずさり。そうだ、身を乗り出すのに夢中になって、人間の世界に落っこちちゃったんだ。
 どうしよう。私は虹から落ちこぼれ。
 空に向かって叫ぶ。

「ど、どうしよう、お兄さま、お姉さま!!」

「何をしてるんだ!」
「低俗な世界に落ちるとは、お前にふさわしい! 二度と戻ってくるな!!」
 イロたちは私に軽蔑の目を向けていたが、白だけは違った。慈愛に満ちた目で私を見下ろしていた。

「ヤレヤレ……お前の願いが叶ったのじゃな。問題ない、後はわしら6色でも、人類を、そしてお前を見守ることくらいできる。お前は存分に、人間の世界を楽しむがよい」

「人間の世界を――?」

 私はそこでようやく気付いた。自分が体を持っていることに。
 触って確かめる。足がある。くるぶしがある。顔がある。髪がある。私は少女の姿になっていた。赤い着物に身を包んでいる。
「に、人間の体だ! や、やった!!」
 恐らくまだ小学生くらいの、若い身体。これから何でもできる。自由に進む道を選べる。無限に色めく未来が、私を待っている!

 今日は私の誕生日。

「それじゃお前に、名前をあげよう」

「名前?」
 私は期待のまなざしを天に向けた。どんな素敵な名前をくれるんだろう。

 白はほどなくして言った。

「色谷明(しきだにあきら)。これが人間としてのお前の名前じゃ!」

「……何それ男みたいな名前……」

 私はえらくガッカリした。

[返信][編集]



[管理事務所]
WHOCARES.JP