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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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430 :げらっち
2024/08/12(月) 23:00:10

「ここは」

 私と茂は、ホールの檀上に居た。
 私にとっては思い出の場所だった。ここは入学式のスピーチをした始まりの場所なのだから。
 あの時とは違い生徒の姿は無く、伽藍洞だ。私はホールを見渡して小さじ一杯分だけ懐かしさを感じた。

「戻った……戻ったぞ! そうか、僕は生きているのか!」

 茂は自身の左手をしげしげと眺めていた。それでも右手ではしっかりと戦隊証を握り締めていた。
 私は左手で戦隊証を掴んでいるため、傍から見れば私たち2人は手をつないでいるように見えただろう。
 ……そんなことは5度死んで5度転生してもしたくない。

「で、何が起きているんだ?」
「色々とマズ~い状況」

 それを証明するかのように爆音がして、茂は飛び跳ねた。
「弱虫毛蟲」
「違う脊椎反射だ。起こらないお前がおかしい。身体に備わってしかるべき機能の欠損した障害者!!」
「脊髄(せきずい)反射でしょエリート君。脊椎(せきつい)は私たち動物のことだよ健常者」

 私と彼はバイザー越しにたっぷりと睨み合った。
 尚も建物の外からは騒音と振動が響いている。何が起きているんだろう。私たちは戦隊証を握り合ったまま、外に出た。

 学園のあちこちから煙が立ち上がり、炎光が薄暗い空を照らしている。敷地全体が怒声と熱気に包まれている。
 慈雨は、学園の火災を鎮火することは無かった。学園の上空には未だにピカリポットが停泊しており、それが巨大な傘の役目を果たし、雨水を跳ね除けていたからだ。雨粒は傘から滑り落ちるように、巨大な円盤の円周に滝を作っていた。
 洗脳の解けた戦士たちはピカリポットへの集中攻撃を試みているらしい。学園の誇る巨大ロボたちが飛び上がり、ピカリポットに攻撃している。だがピカリポットは光弾の雨を降らせ赤子の手をひねるようにロボたちを撃墜する。学園のあちこちから更なる火の手。

 もっと恐ろしいことが起きた。
 ピカリポットから、無数の銀の円盤、小型のピカリポットが放たれたのだ。ミニピカリポットか、ピカリポットジュニアか。名称はどうでもいい。レプリエルは自棄を起こして学園を滅ぼすつもりか?
 学園は絶叫で包まれた。


 親ピカリポット、あそこに楓が居る。恐らくは公一、凶華、佐奈、豚も捕らえられてしまっただろう。

「助けに行かなくちゃ」

 私が走ろうとすると、茂はそれに続かず戦隊証を掴んだので、私の手から変身アイテムがすっぽ抜け、私はすっぴんになった。化粧ではなく変身していないという意味の素嬪だ。
「ちょ、何してんの」
「愚問を吐くな。落ちこぼれ共を助けることに僕に何のメリットがあるんだ?」

「じゃあ逆に聞くけど、あなたが生きていることに何のメリットがあるの?」

「……!」
 赤い戦士は言葉を探している様だった。

「メリットや損得、理屈が全てじゃないでしょ。私はもう一度友達に会いたい。できるならずっと一緒に居たい。それだけだ。あなたも仲間が欲しいなら、生きたいなら、理屈じゃない部分を見せてよ」
「抜かせ……!」
 私は彼の持つ戦隊証に手を乗せた。私は再びコボレホワイトに成った。
「直ちに自分の戦隊証を取り戻せ。お前との相乗りなど長時間は御免だからな」

 あんたのせいで戦隊証は没収されたんだが……

「こっちこそ御免だよ。早く自分の戦隊証で変身したい。恐らく校長先生が持っている。目指すは、校長室」

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