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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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434 :げらっち
2024/08/12(月) 23:02:00

 私は地下牢に降りてきた。
 薄暗い階段。ひんやりとしたコンクリート。ここまでは、地上の爆音も響かない。
 学園に敵が入り込んだ場合などに捕らえておく牢だと聞く。避難したのか、看守も誰も居ない。

 電灯に照らされた鼠色の地下空間。
 小型のトイレ以外には何も無い簡素な牢が続いている。
 最奥の牢。

 闇の中に、真っ黒い人が座っていた。


 ブラックアローンだ。


 彼は戦ー1で私たちを襲った後、地下牢に投獄されたと、新聞で読んだ。
 私は黒い鉄格子に手を掛けて言った。

「久しぶり。話したくて来た」

 挨拶など返す柄では無いと知っている。私はすぐ本題に入る。

「外で戦争が起きている」

 ブラックアローンはいつも通り変身した状態だ。真っ黒いマスクに大きな赤い単眼。
「いつものことだろう」
 壁から飛び出した固そうな石のへりに腰を掛け、うつむいている。
「ねえ、力を貸してよ。あなたもここの教師でしょ? 現状頼りになるのはあなたしか残っていない」
「言ったろう。虹が消えたら、暗雲が立ち込めるとな」

「そしたらまた掛けるだけだよ。うじうじすんな、ムカつくな!」

 私は鉄格子を蹴った。ガン、音は地下を木霊する。爪先が痛かった。

「私はあなたの過去を見た。あなたが影の中に入り込んだ時、私に記憶を託していたんでしょう? あなたは私に忠告してくれていた。それには感謝する。でもさ」

 でもさ、

「過去は過去じゃん! いつまでも引きずられて後ろを向いてちゃ、ヒカリさんが悲しむよ!!」

 やはりこの言葉は刺さったか。ヒカリ、その名前は穿ったか。
 ブラックアローンは顔を上げた。大きな赤い単眼が私を見た。

「貴様にヒカリの何がわかる」

「なーんにも。思い出の量はあなたと比べ物にならないでしょう。でもわかることがある。私はあなたの記憶を見た。あなた自身よりも冷静にね」

 ニジレンジャーが女社長オーソに負けた時、黒木飛一郎は感情を遮蔽した。
 その先に起きたことを脳の四隅に押しのけて考えないようにしていた。
 でも私はクリアな状態でそのシーンを見た。感情が入らなかった方が、より確実に物事を見れる場合もある。岡目八目という言葉もあるくらいだ。

「あなたは隠し事をしている。自分の記憶を捻じ曲げて。忘れようと努力して」

「……」

「ヒカリさんは、生きてるんでしょ?」

 ブラックアローンは黙ったままだけど、それは肯定を意味しているとわかった。

「じゃあ何で一緒に居てあげないの? ヒカリさんはあなたと居たいはずだよ。学園で余計なおせっかいを焼いている暇があったら、自分のすべきことをしなよ」

 ブラックアローンは立ち上がった。

「余計なおせっかいはお前だ!!」

 ブラックアローンは黒いマスクをむしり取った。眼帯を付けた白い顔が現れる。私と同じアルビノだ。
 2メートル近い体躯に、私は気圧されそうになった。でも鉄格子を握り締め離れない。
 ブラックアローンはごつい手で鉄格子を叩いた。牢全体が大きく揺れた。 

「……俺のせいでヒカリは重傷を負った。ヒーローとしての未来は潰えた。仲間たちは死んでしまった。俺はヒカリに会う権利など無い!」

「まだそんなこと言ってる!! だからあなたは闇から出れないの!!」

 ボサボサの白い髪に、白い無精髭の生えた骨ばった顔。青い瞳に血走った目。
 この男は弱い。
 ヒカリさんという一筋の光りが無ければ、生きてこれなかったぐらいに。

「今度はあなたが、光りになってあげる番だよ。あなたはもう一度ヒカリさんに会うんだ。ヒカリさんにとってもあなたは光りなんだからね」

 彼、飛一郎は、目をしばたいた。
 急に毒気の無い顔になった。

「……ヒカリ?」

「ヒカリじゃないよ。私は七海!」

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