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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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436 :げらっち
2024/08/12(月) 23:02:40

「虹を?」

 7色の虹を掛けろと?

 でも現状、自陣は3人だけだ。黒と白と赤。
 天堂茂はちょっと頼りないし、飛一郎は心強いとはいえ、3色では到底虹になれない。

「お前に言われて気付いたよ、ナナミ」
 飛一郎は、ちょっとだけ笑った。
「戦隊には切っても切れない絆がある。俺はかつての同志たちのイロを貰った。俺の中にはヒカリの赤が生きている。お前の中にも仲間たちのイロが、宿っている。虹は作れるさ」

「いいじゃん、前向きになってきたね」

 レプリエルと対決した時、私は公一、佐奈、豚、凶華のイロを借りた。緑、黄、桃、紫。
 足りないのは青だ。
「楓」
 私は目を瞑って、彼女の青を、ぬくもりを思い出した。

 握ってれば、あったかくなるよ!

 彼女はそう言って、私の冷たい手を、握り締めてくれた。
 友情に触れたことのなかった私は、彼女のぬくもりに触れることで、ようやく雪溶けし、心を覆う氷の鎧も溶かされた。彼女なくして公一や皆にも出会えなかっただろう。
 初めて友達の手を握り、指を絡めた時、私は彼女に惚れてしまったんだ。心と心がくっついて、もう離れなくなったんだ。そしてきっと、彼女も私のことを好きになったんだ。

 あたしと七海ちゃんは一心同体!

 彼女はそうも言ってくれた。
 一時的に離れ離れになっても、私の中にはいつも楓が居る。飛一郎の中にヒカリさんが居て、彼が炎の魔法を使えたのと同じだ。


「ブレイクアップ」

 蝶がさなぎを突き破るように、ザリガニが脱皮をするように、自分の中にある本当の自分が、真の姿を曝け出し、拘束から解かれるような感覚だった。
 私はコボレホワイトに成った。

「楓、公一、佐奈、豚、凶華、力を借りるね」
 私はイロに尋ねる。イロはうんと言った。

 私はそして、天堂茂を見た。
「あなたも」

 赤い戦士は戸惑っていた。
「に、虹などくだらない。それが一体何に……」

「みんなに会いに行くんだよ。くだらない見栄を張ってないで友達になろう。そのほうがよっぽど気楽だよ」

「……わかった」
 天堂茂は、僅かに、分度器で測ったなら1度にも満たないくらい頭を下げた。
 それで十分だ。
「使え!!」
 彼は赤を投げてよこした。私はそれをキャッチした。


 私は天に照準を合わせる。


「ニジヒカリ」


 私は虹を描いた。
 赤、青、黄、緑、ピンク、紫、そして白。七色の虹が、虹色のアーチが、空を塗っていき、ピカリポットに突き刺さった。
 円盤は呆気なく真っ二つに割れた。
 円盤の割れ目から多量の雨粒が落下し、学園中の炎を掻き消した。
 ピカリポットは分割されながらも、尚も浮いている。

「じゃ、行ってくる」

 私は足元から伸びる虹を、踏みしめた。
「待て、お前だけでは心配だ。戦隊のエースはやはり常に赤だ。僕なくしてコボレは始まるまい」
 茂もついてきた。
 一歩、また一歩と、虹の階段を上がって行く。数歩上がったところで、ちらりと振り向いた。

「あなたも来る?」

 私は地上に残って居る飛一郎を見た。彼はハッとして私を見上げた。

「……虹に黒は無い」

「何色でもいいんだよ! 黒でも白でもいいの、この虹は。行こ!」

「……わかった」

 私は茂と飛一郎と共に、虹を駆け上がった。

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