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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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46 :げらっち
2024/05/04(土) 19:57:52

第5話 滅茶苦茶な夜


 3人寄れば文殊の知恵、戦隊は成立する。
 私は魔法クラス、楓は生物クラス、江原公一は忍術クラス。クラスを跨いだユニットというのは珍しいが、取り敢えず規定人数には達したことになる。

 でも虹を作るためには7人、せめて5人は欲しい所だ。

 とある夜、楓が部屋に巨大な水槽を持ち込んできた。
「何それ?」
「カエルの王様と鉄のハインリヒ!」
「いや、名前を聞いたんじゃなくて……」
 楓は水槽の中に住む生物の名前を答えた。ごめん、あまり知りたくもない情報だ。
「あのね、生クラに入ると何か動物を飼育しなきゃいけないの! だからビオトープで出会ったカエルの友達を連れてきた! これからは4人部屋! ほら同室の七海ちゃんにご挨拶!!」
 水槽の中からゲコゲコという挨拶が聞こえてきた。
 水槽の中には岩や水草があり、水は緑色に濁っているので、カエルの姿は見えない。人が1人すっぽり入れそうなほど大きな水槽だ。ハッキリ言って邪魔だが、楓のクラスの課題なら仕方ない。
「オスとメスだから、交尾も見れるかもよー!」
「やめてよ……」


 戦隊学園の夜は静かだ。

 唯一活動している忍術クラスは、夜の闇に忍んで物音を立てない。
 ホテルのような学生寮は、静寂によって監視されている。

 でも、私たちの部屋だけは違った。
 23時過ぎになってもGフォンから大ボリュームで音楽を流していた。Gフォンには音楽を流したり録音する機能もあるのだ。隣の部屋からクレームが来ようが知ったこっちゃないと無視を決め込んだ。

 私は2段ベッドの上段に寝っ転がって天井を見上げていた。下段から「アバ・アバ・アバ・アバ・アバズレンジャ~!!」とメロディが聞こえる。
「何この曲?」
「アバズレンジャーのテーマ曲だよ!」
「ふぅん……楓にぴったりの曲だね」
「え、何か言った?」
「別に何でもナイデスヨ」

 楓に江原公一。メンバーが着々と集まっている。悪くない状況だ。
 江原公一は渋々とだがコボレンジャーへの加入を許諾した。でも彼とはあまり関われてないな。彼は忍術クラスで夜活動し、昼は寝ているから、なかなか会えない。また夜の活動で喘息が悪化してないか、いじめられてないか、などつい心配になってしまう。他人事なのにおかしいな。
 土日は休みだろうし、一緒にご飯でも食べようかな?
 ……私は彼のことが少し気になっているようだ。似た者同士にも思えるし、私もどこかでは他人を色眼鏡で見ている、という事に気付かせてくれたからだ。


 すると突然、ピンポンパンポーンという音が鳴った。

「音楽止めて!」
「えっ」
 楓は急いでGフォンの音量を落とした。館内一斉放送だ。怪人が現れた時のことを思い出す。緊急事態だろうか。

『女子寮A棟に男子生徒が侵入した模様。戸締りに注意し、何かあれば事務レンジャーかガードレンジャーに内線を入れろ。繰り返す、女子寮A棟に男子生徒が侵入した模様――』

「A棟、この建物だ!」
「ふむ」
 私はベッドから飛び降りた。
「ヘンタイかな? 七海ちゃん?」
 楓は何故だか少し嬉しそうにしていた。
「とにかく鍵が掛かってるか確認しよう」
 私と楓は、ごちゃごちゃした部屋の狭い隙間を抜けて、扉に向かう。
 私は前開きの水色のパジャマ、楓はゴキブリ柄、ではなくカブトムシとクワガタ柄の特殊なセンスのパジャマだ。

 サムターンは縦になっていた。つまり鍵は掛かっていない。

「不用心だよ楓」
「はい? 七海ちゃんがジュース買いに出たのが最後じゃん!」
「あ、そうだった。ごめん」
 そういえば、じゃんけんに負けて私が自販機に買い出しに行ったのだった。その時に両手が塞がっていて閉め忘れたに違いない。

 私は扉に近付いて鍵を閉めようとする。
 すると外から足音がした。こちらに向かってくる。男の荒い息が聞こえる。

「楓、もうそこまで来ているみたいだよ」
「えっ!?」
 こうなれば迎え撃つしかない。
「私が魔法で目をくらませるから、相手が怯んだところに、楓が椅子を振り下ろして」
「お、おっけい!」
 楓は座椅子を持ってきた。
 私は「ブレイクアップ」と変身し、扉に標的を合わせた。
 ハァハァという息遣い、ドアノブが回り、扉が開く。

「ブリザード!」
 冷気が不審者にまとわりついた。
「冷た! 何すんねん!」
「え」
 今の関西弁は。だが止める暇もなく楓は座椅子を振り下ろしてしまった。
「うぎゃあ!!」

 江原公一は殴り倒された。

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