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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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50 :げらっち
2024/05/04(土) 20:12:22
水草などを被り、水中に潜む忍術を狐隠の術という。
水槽は濁っていたし、江原公一のイロは薄い緑だ。こんなにピッタリの隠れ場所は無い。私がかくれんぼの鬼だったとしても、共感覚を駆使しても見つけられないだろう。
パンツ一丁の彼は全身ヌメヌメになっていた。しかも臭い。
「キャー、裸ー!!」と楓。
彼はガリガリであばらが浮き出ており、正直、黄色い声を上げるような体型ではない。しかも脛毛は一丁前に生えていた。
「さ、寒くて死にそうや! はっクション!!」
くしゃみの音で見つからないか心配だ。楓が洗面所からバスタオルを持ってきて、プールから出た時みたいに羽織らせた。
「あなたの犯した校則違反って何なの?」
「ぬ、濡れ衣なんや。はっクション!!」
「どういうこと?」
「俺、忍術クラスの集金係しとんねん。1年生のみんなから預かったお金を金庫に入れとったんや。そしたら、金庫の金が……全部、消えとったんや。鍵を持ってるのは俺と先生だけやから、俺が盗んだってことにされたんや……」
沈黙。
「いくらくらい?」と楓。
「いくらって……忍術クラスは他クラスより専門的なことするからなあ。補助対象外なんや。忍器代やから結構高いで。手裏剣・鉤縄・苦無(くない)……1人10万で、計300万」
「300万!」
江原公一の親は有名忍者なのでそれくらい払えるだろうが、このご時世10万を払えない家庭も多いだろう。忍術クラスの生徒が少ないのは、そういう経済的理由もあるんじゃないのか。
300万ともなると結構な大金だ。
私も楓も公一をじっと見た。彼は半裸のまま後ずさりし、ゴキブリみたいに部屋の隅に逃げた。ぽたぽたと水が滴り落ちた。
「お、俺は盗ってないんやで! ほんまに!!」
「本当に?」
彼は上級生に虐められ金を巻き上げられていた。金欠になり盗ったという可能性も……
彼は手や首のみならず全身をブンブン横に振って無罪を主張した。
「ほんまやほんま!! ふざけんなや!!!」
「静かに。男の声がするとバレるよ」
消えたクラスのお金。私は考えを巡らせる。
「金庫に他の物は入ってた? 他の人が盗ったとは考えられる?」
「金は茶封筒に入れとった。他にはナンも入れてへん。さっきも言うたように、鍵は俺と和歌崎先生しか持っとらん。ちゃんと施錠しといたし、鍵は肌身離さず持っとるから他の人が盗ったとは考えにくいんやけど……」
江原公一は白いブリーフの下から、小さい銀の鍵を取り出した。
「俺はほんまにナンもせえへんのに! ど、どないしよ!? こんな理由で退学になりたないねん!! オ、オトンに合わす顔が無くなってまう!!」
彼は崩れ落ちた。
「大丈夫だよ! あたしたちが何とかするってぇ! 公一くんの忍術と七海ちゃんの魔法があればもう無敵!!」
楓はいつも悪意は無いが配慮が足りない。江原公一は過大評価されると追い詰められてしまう。
「し、信用できへん!! 伊良部! 小豆沢! どうせお前らも俺をソウサクジャーに突き出して褒賞金を貰おうとか思っとるんやろ!?」
そんなことないのに。
すると楓は、「水臭いな、楓と七海って呼んでよ!! あたしたちも下の名前で呼ぶから!」と言った。指摘するべき場所が違う。
江原公一は体が冷えてきたのか、ゴホッ、ゴホッ、と激しく咳き込み出した。私は彼に近寄り、背中をさすった。
「私たちの部屋に来たのは英断だったね、公一」
楓をいつも呼び捨てているお陰で、相手を下の名前で呼ぶのに抵抗感が薄れていたが、異性をそう呼ぶと、また違った摩擦があった。
「私たちはコボレンジャー、同じ戦隊の仲間だから。信用してよ」
「戦隊か……ゲホッ、そうやな」
公一は私を見上げた。
「わかったよ、七海」
「まず服着たら?」
私たちのジャージと混ぜてカゴに放り込んでいた公一のジャージを、彼に渡した。
「現場を見れば何かわかるかもしれない」
「え!? そんなん自殺行為や! 外はソウサクジャーの連中が目を光らせとるんやで! 相手は3年、しかも首席となれば玄人中の玄人や。校舎まで行けるわけないやん」
「何弱気になってるの。潔白なんでしょ? それならこっちが折れる必要ない。とことん戦って無実を証明するだけだ。汚名を返上しないと」
寮から忍術クラスのある校舎まではかなり離れている。
人目を避けるならバスは使えないので、徒歩で行く必要がある。そもそも、夜間はバスは通っていない。
私は不敵に笑った。
「忍者は夜の闇に隠れて行動するものでしょ……?」
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