スレ一覧
┗
380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
┗51
51 :げらっち
2024/05/04(土) 22:09:20
0時を過ぎた戦隊学園。
私たちは……つまり、私と私の腕に引っ付いている公一は、車道の脇の森を歩いていた。木々の間からは、虫たちの話し声が聞こえている。
楓はうるさいから置いてきた。「絶対行く!」と駄々をこねた彼女だが、私が「留守番も大事な仕事」と言うとなんとか納得し、「じゃあお2人さん仲良くね~あたしはカエルの王様と鉄のハインリヒと3Pで待つから!」と色々意味深なことを言っていた。
パンツ姿ではなくなった公一はガクガクと震えていた。
「なぁ、見つかったらどないしよ……」
「ビクビクしないで。この暗さじゃ顔は見えないし、こそこそしてたら余計目立つから」
女子寮から校舎まで、徒歩約30分。暗い中だが、車道に沿って進んで行けば何とか校舎に辿り着けるだろう。
よく見ると闇の中にぽつりぽつりと生徒の影があった。寮を抜け出しているのは私たちだけでは無いようだ。
夜の森で自主練に励む者、夜空を見ながら散歩している者。
道路脇のベンチに座って見つめ合ったり、手をつないで歩いてるカップルなんかはまだ良い。
森の中でおおっぴらにいちゃついている男女もある。ソウサクジャーは、こっちの風紀を取り締まったらどうだろうか。
「きっしょいな。何でわざわざ外でやるんやろ。頭わいてるんとちゃう?」
「男子寮は女子禁制、女子寮は男子禁制。校舎は見回りがあるから、外でやるしかないんでしょ」
「成程な」
ふと思った。
公一はさっきから、私の胸元をちらちらと見てくるではないか。
「助平」
「そっそんなんしてへんで!」
公一は飛び退いた。
私は胸が平均よりは大きいサイズなので、男子に、稀に女子にもちらちら見られる。さりげなく見ているつもりでしょうけどしっかりバレてるから。
私は車道のアスファルトを踏んで歩いた。電灯がシルエットを照らし出している。私は、いつもの制服や緑ジャージではなく、水色のパーカーにジーンズという私服を着ていた。
公一が数メートル後ろを付いてくる。
「なあ七海」
私は振り向くことはせず、言葉だけを後ろに返す。
「何?」
「……きれいやな」
私は振り返った。
「お化けと言ったり綺麗と言ったりどっち? 鑑賞対象にして欲しくないのだけど」
私はこの見た目を綺麗、と言われるのが嫌いだ。
だが彼は立ち止まり、空を見上げていた。私の容貌について言ったのではないようだ。早とちりしてしまった……恥ずい。
私もつられて上を見た。
満天の星空だった。
濃紺に白が散りばめられている。見上げる先は、どこまでも何も無い。突然重力のブレーカーが落ちたら、どこまでもどこまでも落ちて行っちゃいそう。
どっちが上でどっちが下かもわからなくなって、自分が広大な宇宙に属しているんだと思い知らされた。
「ほんと、きれいだね」
虹も見たいが、夜の光りも綺麗だ。太陽や晴れ空と違って、私の目でも見ることができる。
いつの間にか公一が私の隣に立っていた。
私たちは宇宙の彼方を見るのを止め、お互いの顔を見た。
何だかムーディだ。男子と2人きりで夜道を歩いて、夜空を見上げるなんて、ついこないだまでの私には想像もできないことだった。状況はともかく、高校デビュー、しちゃったかもしれない。
[
返信][
編集]
[
管理事務所]