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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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53 :げらっち
2024/05/04(土) 22:13:16
忍術クラスの教室。畳の敷き詰められた部屋は伽藍堂。
体験授業の時は蝋燭で照らされていたが、今は白色電球を点けたので明るい。
「金庫どこ?」
「隣や」
ふすまを開けて隣室に入る。途端、強烈な重力を受け成す術も無く落下した。畳が開き、足を突っ込んでしまったのだ。
「七海!!」
公一がパーカーのすそを掴んで支えてくれた。穴底には、先の尖った竹が上を向いて並べられている。落ちていたら串刺しになっていただろう。生徒相手に容赦の無い罠だ。毎年生徒に戦死者が出ているという噂もあるほどだ。
「忍者屋敷やで。ちっとは気ぃつけえや。油断厳禁や!」
公一は私を引っ張り上げた。ひょろひょろだが流石男子、力持ち。
「ふぅん、やるじゃん。ありがと」
「ほんじゃレディーファーストやで」
「私の嫌いな言葉をどうもありがとう」
私は助走をつけ四角い穴を跳び越えた。それに続いて、公一も難なく飛び越えた。
床の間に、大きな木の箱が設置されていた。和風な金庫だ。
「開けてみて」
公一は銀の鍵を取り出し、鍵穴に刺して回す。
扉が開き、中に光が射し込んだ。木目があるだけで、何も入っていない。
「空っぽやろ」
何も無い。
いや。
それは、一般的な目における感想だ。
私には他人には見えない特殊な物が見える。
イロだ。
そこには、イロがあった。
「茶イロい」
「何やて?」
私は金庫に顔を突っ込み、暗い中、目を細めた。
微かだけど、茶イロが残っている。さっき道に落ちていたのと同じような物だ。
「最首か!? 茶色は美しいとかけったいなこと言うとった!」
「そう。奴の自慢のイロだ。独特のイロだから見間違うはずが無い」
「最首が金を盗んだ真犯人か!? 横領した上に罪をなすり付ける風紀委員長とはとんでもないやっちゃな!! どうなっとんねん!!」
公一は吠え、地団太を踏んだ。やはり世の中は理不尽で、上の者を信用すべきではないってことだ。
「……あだっ!!」
私は頭を上げようとして、金庫の天井に思い切り頭頂部をぶつけた。
「いったあ!」
「あほか!」
私は頭をさすりながら、金庫から這い出た。
「……けどこれでわかったね」
「でも鍵は?」
「ソウサクジャーはマスターキーがあるって言ってた」
「それや!!」
謎解明。私と公一は手を取り合って喜んだ。
「……でもそれだと証拠不十分やな」
「うん。金庫に茶イロが残っていると言っても、イロを見られる人は私しか居ないからね」
「のこのこ出てってこいつが真犯人やーいうても逆にとっちめられんのがオチや。まだ見つかるわけにはいかへんな」
「そうだね。ん?」
私は何かに気付き、公一の足を見た。
「あ!!」
「何や?」
「足に茶イロが付いてる!」
「はあ? ふざけんなや! ばっちいばっちい!」
公一は足をぶんぶん振った。毛の生えた細い足に、最首の茶イロが付着している。
最首が地面に撒いて行ったイロを踏んだんだ。
最首はイロを残していくことで、気配を張り巡らせていたんだ。そうすれば私たちの気配を読んで、動きを察知することができる。
「あーあ、あいつの罠に掛かって。忍者の癖にちょっとは気を付けてよ。油断厳禁でしょ?」
公一は恨みがましい目で見てきた。なじりたいが、私以外にはイロは見えないからやむなしか。
空間の気配を把握するとは、さすが忍術クラス首席というだけはある。胡散臭い奴だったが実力はあるらしい。
「最首は私たちの動きにもう気付いてるかも。捕まえに来るよ」
「ど、どないしよう……」
私と公一は、見つめ合った。瞳と瞳が一直線につながった。目と目で会話するとは、こういうことだろうか。
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