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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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61 :げらっち
2024/05/08(水) 13:15:17

 ゴン!!!

 何の合図も無しに、二者がぶつかり合った。人と人、単体の生命同士のぶつかりなのに、まるでダンプトラックがぶつかったような衝突音、そして衝撃。常人なら一撃で吹き飛ばされるだろう。だがこれは始まりの鐘でしか無かった。青竜丸が目にも止まらぬ突っ張りの回転で藍風を土俵際に押していく。まるでマシーン、兵器だ。私も楓も見とれた。勝ちが決まったか? だが番付は嘘を吐かなかった。藍風は腰を低くし器用に土俵を回り込み、頭を下げて青竜丸の懐に突っ込んだ。廻しを掴み、青竜丸の動きを止めた。そのままじわじわと寄っていく。青竜丸も背中越しに藍風の廻しを掴んだり、足を払おうとしたり抵抗するも、じっくりと料理され、最後は土俵の外に寄り切られた。

 強い。
 流石、力の士だ。こっちは見ているだけで息切れし、汗を垂らしてしまった。

 藍風は飄々と東方に戻り、青竜丸は息を荒げながら西方に戻った。2人は頭を下げ、青竜丸は「ありがっした!!」と怒鳴った。

 あれだけの力があれば武器や魔法が無くとも、怪人や敵と戦えそうである。
 すると代田は言った。

「既に多くの有力戦隊を世に輩出している。わしの教え子で最も出世したのはボクサーファイブじゃろうな」

 代田は目線を上げた。番付の上に大きな額縁が掛けられており、ボクシンググローブとチャンピオンベルトを付けた、赤・青・黄・緑・オレンジ5人の戦士の写真が飾られていた。
「あやつらは学園で無敵の無敗を誇った」
「すごいですね! 今も現役活躍中ですか?」と楓。
「いや……」
 代田は誇らしげに写真を眺めた。

「死んだよ。戦争でな。あやつらは武器も無しに、敵の陣に殴り込み健闘した。だが敵に囲まれ、最期は自爆し敵の陣に壊滅的な被害を与えた。あやつらは英雄、わしの誇りだよ」


 死。

 戦士を養成する学校ならば、それは付き物であり、避けては通れない。学園で無双するほどの強さがあっても、外の世界では命を落とす。OBやOGにも、既に多くの犠牲者が出ているに違いない。
 楓は切ない表情で写真を見ていた。
 でも私には納得がいかなかった。

「死なすために教えていたわけじゃないんでしょ?」

 代田は目を見開いて、私を見た。この表情が示す物は怒り。

「何と不敬なことを……出て行け!! 相撲は女人禁制だ! 消え失せろ!!」

 代田は腕を振り回した。私も楓も急いで体育館から出た。
 稽古をしていた戦士たちも全員が男だった。もしかすると格闘クラスは男だけのクラスなのだろうか。


「あたしたちには縁の無いクラスだったねぇ~……」

 私たちは校庭を歩いていた。日が照っているので私が通れるのは日影だけ。校舎の影、木の影を踏んで行く。飛んだ縛りプレイだ。楓も私の影踏みに付き合ってくれた。
 すると前方に、太陽にも劣らぬ光源を感じた。
 その人物が視界に入るより前に、私はそれが誰か当てることができた。
「いつみ先生!」

「おはよう♪」
 赤坂いつみその人が姿を現した。天に輝く恒星に負けない、眩しいイロを持っている。

「おはようございます!」
 私と楓は頭を下げた。
「先生、魔法クラスを休んでクラス見学をしていてごめんなさい……」
 いつみ先生はふふんと笑った。
「もちろんいいとも。そのためのお試し月間だ。色んなクラスを体験してみるといい♪」
 そう言ってくれると思った。
「戦隊で必要なのはバランスだ。1人が強くとも、チームがバラバラでは勝てない。違うカラーのメンバーを集め、補い合うことで、真の強さを得る」

 私なら、この目で、カラフルなメンバーを集めることができる。
 世間ではオチコボレでも、綺麗なイロを持つ、そんなメンバーを。
 そして虹色の戦隊を作るんだ。

「そうそう、機械クラスはもう見たかな? まだだと言うなら、行ってみることをオススメする♪ 戦隊には巨大戦力も必要になってくるからね」
「どこにあるんですか?」
「地下にある。中央校舎から行けるから……」

 私と楓は先生の説明を聞き、機械クラスを目指すことにした。
「ありがとうございました、いつみ先生!」
 先生はバイバイ、と手を振っていた。先生が見えなくなったところで、楓が言った。
「いつみ先生、だって!! 下の名前で呼んじゃって!」
「うるさいよ伊良部さん」
「よそよそしいな!」

 その時。

 黒の気配。

 私は校庭の向こうを見た。眩しく揺らめく白砂の先、木の陰に、真っ黒い巨体が立っていた。
 ブラックアローン。
 不気味な赤い単眼が、私たちを見ていた。背筋が寒くなり、私はつい楓の手を握っていた。
「どうしたの?」
 目をぎゅっと瞑り、もう一度開く。するとその姿は消えていた。

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