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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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65 :げらっち
2024/05/08(水) 13:40:05

 食堂ではおなかを空かした生徒たちがずらーりと列を作っていた。
 男子も女子も最後の成長期に、少しでも体を大きくしておこうと、ご飯をたらふく食べようとする。学園では1日にどれくらいのお米を消費しているのか見当も付かない。
 食糧難の此の世、どこからこれだけの食糧を確保しているのか。まあそんなのは私の気にすることじゃない。私も食べたいだけご飯を食べさせてもらおう。

 私と楓はトレイにスプーンと箸を乗せ、列の最後尾に付いた。生徒たちは私の姿を恐る恐る見ていた。何人かはそそくさと去って行ったので、列がすいた。ありがたい。
 すると私の後ろに、例のポニーテールの女子が並んだ。
 改めて並んでみると、身長がかなり低い。私より頭1つ分小さく、140くらいしかないように見える。今どきの小5でももう少し大きい。小柄だが華奢ではなく、ぷっくりした体型だ。ブレザーに長めのスカート姿。

「ねえねえねえ七海ちゃん、聞いてる?」と楓が喋り掛けていた。後ろの子の観察に夢中になっていた。
「ごめん聞き逃した」
「聞けし! 七海ちゃん、今日は何食べるの?」
「カレー」
「えぇ? 毎日カレー食べてない? 飽きないの?」
「飽きないよ。カレーは私に飽きてるかもしれないけどね」
 それに戦隊学園のカレーは日によって具材が違う。かぼちゃや茸、コーンが入ることもあって私の舌を飽きさせない。
「じゃ、あたしはグリーン定食にしようかな。ダイエットしなくっちゃ!」
 楓は痩せ型なのに、何故女子は自分をデブだと思い込むのだろう。

 やがて楓の番になった。
「グリーン、180!」
「あいよー」
 カウンターのおばちゃんがリクエスト通りのグラムの白米を盛る。おかずはグリーンサラダのみの簡素なメニューが出てきた。こんなんじゃ午後の授業でぶっ倒れる。
 楓は「青虫になった気分! お先に~」と言ってテーブルのほうに向かって行った。

 次は私の番だ。

「戦隊カレー、450で。特上の激辛」

「激辛!? てか450グラムって……」
 後ろのポニテの子が小声で喋った。チビって言うな! と怒鳴っていた時とは対照的な控え目な声だ。声だけのハンドボール投げなら2メートルも飛ばなそうだ。
「うち120が限界です……」
「おなかすいてるから余裕。カレーにはご飯がよく合うよ。それに辛くないカレーなんて中身の無いおにぎりと一緒」

「赤の無い戦隊とも一緒?」

 私は振り向いて、ポニテの子をじっと見た。挑戦状とも受け取れる言葉。
「そう思う?」
「いや、思わない。赤だけが素敵な色じゃないもん。噂に聞きましたよ。コボレンジャーってヘンな戦隊のメンバー募集してるんでしょ?」
「うん。確かにヘンだけどそれが?」

「うちも入れて下さい」

 彼女は私を見つめて、当然のことのようにそう言った。そう来るか。
「いいよ。大歓迎」
「あ、やったぁ。鰻佐奈(うなぎさな)って言います。よろしくお願いします」

 トレイを支えているので握手ができない。私はペロッと舌を出して挨拶代わりとする。

 給仕のおばさんは特製カレーの調味に少し時間を掛けている。その間に彼女は話す。
「うちの色が見えたんですか?」
 相手の色彩を読み取るなど朝飯、いや昼飯前だ。
「見えたよ。鮮明な黄イロが。ポンパドーデスの黄ばんだイロより余程素敵だよ」
「そうそう!」
 佐奈と名乗った女子は、途端に饒舌に話し始めた。
「あいつ、ほんと性格悪い! コボレンジャーでロボ作って見返してやりますよ」

 棚から牡丹餅と共にロボまで落ちてきた。コボレにも巨大戦力が手に入る兆しが見えた。これはうれしい。

「現在のメンバーは何人?」
「あなたを含めて4人」
「え? 4人って戦隊じゃ最も忌むべき人数じゃないですか……大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃない。これから大丈夫にする予定」
 佐奈はきゃはッと笑った。
「スピーチの時も思ったけど、七海さんてほんとクレイジー。すっごくバイブレーション感じちゃいますよ」
「誉め言葉だと思っとく。あと、敬語じゃなくていいよ」

「あいよー。大盛りの激辛!」
 私のトレイに、ドスンとカレーの皿が置かれた。すごい重量、スパイシィ。これはたまらない。福神漬けも付いてラッキーだ。

 仲間が増えるのは嬉しい。けれどその喜びも蛮声により台無しにされる。

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