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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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67 :げらっち
2024/05/08(水) 13:43:36
あれほど混み合っていた食堂は、閑古鳥が鳴いていた。どんな鳴き声か知らないが。
マナーの悪い生徒は退場させられてしまったのだ。机や椅子はなぎ倒され、あちこちに割れた皿や食材が散乱している。とても食事できる状況ではない。
私はカレーの乗ったトレイを持ったまま被災地を歩いた。
「うひ~! 酷い目に合った!!」
楓は机の下に隠れてサラダを食べていた。私は手を差し伸べ、彼女を引っ張り出す。
「それはそうと楓。4人目のメンバー見つけたよ。それも、巨大戦の戦力になりそうな子」
「えっほんと!? ビンゴ! それって巨大な子?」
「いや、その逆だけど……」
私は楓に佐奈を紹介しようとする。でも佐奈の姿が無い。
見回してみると、食堂の入り口に彼女の姿があった。
「ブヒ~~!!」
豚の鳴き声がした。生物クラスから逃げ出してきた家畜だろうか。
そうではなかった。佐奈は誰かと言い争っていた。その相手は、豚を擬人化させたような醜男だった。
ぶくぶくに太った顔、顎は二重ではきかず三重になり、首が無い。肉で盛り上がった頬、顔のパーツは殆ど肉に押し潰されており、目も例外ではなく線を引いたようにほっそりしている。しかも豚っ鼻。あれと比べれば公一がイケメンに思える。
髷を結っており、ピンクの着物姿だ。ドスコイジャーの一味だろうか。青竜丸たちよりは小さいが、それでも恐らく180センチ以上あり、横幅も広く、樽のような体型をしている。佐奈が余計に小さく見えてしまった。
2人は何を揉めているんだろうか。
「チビって言うな! 撤回しろ!!」
「撤回も何も、チビじゃないブヒか。僕は身体的特徴を述べただけブヒ。早くそこをどけ。僕が先にご飯を食べるブヒ!!」
豚は佐奈を抜かそうとするが、佐奈は負けじと立ち塞がる。しかしあの体格差。豚に振り払われ、佐奈はコテッと倒れた。豚はカウンターにドスドス向かった。
「佐奈、大丈夫?」
私はトレイを持ったまま彼女に駆け寄り、手を差し出すが、彼女はその手を取らず、自力で立ち上がった。
「別に大丈夫、自力で立てる。子供扱いしないで」
「あらそう」
「それよりも聞いてよ七海さん!! あいつ、うちのことをチビって言ったんだよ!! 許せないですよ!」
佐奈にとって「チビ」という言葉が最も忌むべき地雷らしい。彼女は顔をしかめ、ブレザーの裾を握り締めていた。
「別に、あんなデブの言うことは無視していいよ。食べる事しか能が無いただの豚だ」
すると。
「ブヒィ? 何て言った?」
豚は地鳴りを起こしながらこっちに戻ってきた。
「豚。聞こえなかった? ぶ・た」
「僕を豚だと?」
豚は短い腕をぶんぶん振って私の目の前に立った。肉の塊のような体。私はだいぶ上を向いて喋らねばならなかった。
「うん。だって豚そっくり。こっちも身体的特徴を述べただけなのだけど」
豚は細い目を、更に細め、意地悪く笑った。
「面白い小娘ブヒ。僕が誰か知らないブヒ? ドスコイジャーの一番手ブヒよ! 女の子なら張り手一発で脳震盪」
豚は張り手を取る真似事をした。威嚇のつもりだろうか。
「一番手って、序ノ口? 相撲だったら一番雑魚じゃん」
「ブッ!」
豚の動きが止まった。脂肪だらけの顔がピクピクと震えている。今の言葉は効いたか?
佐奈は「謝れこのブタァ!!」と怒鳴った。ハンドボールは25メートルは飛びそうだ。
だが豚は「嫌ブヒ~」と言ってお尻ぺんぺんした。
今にも飛び掛かりそうな佐奈。こうなれば私が勝負を挑むしかないな。
「じゃあ豚、私と勝負しよう。私の戦隊のメンバーをやってくれたお返しがしたいから」
「小娘が一体何で僕に太刀打ちするつもりブヒ?」
「カレーで」
私は大盛りのカレーの皿を手に取った。
「あなたが負けたら、佐奈に謝って貰う」
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